*1 Iwata HIroakI はじめに要 旨目的 本研究は、機械学習技術を用いて医薬品の血漿中濃度の時間変化(濃度−時間曲線)を予測する手法を開発し、その有用性を検証することを目的とした。個体差を考慮した予測モデルの構築を目指した。方法 既存の薬物動態データベースから多数の薬物について血中濃度データと分子構造情報を収集し、ランダムフォレストにより予測モデルを構築した。モデルは分子情報を入力として血中濃度の時間推移を出力し、64 名の公開済み臨床被験者データで外部検証を行った。結果 構築したモデルは実測値(Dependent Variables:DV)と高い一致を示し(決定係数 R2 > 0.8)、新規化合物に対しても良好な予測精度を示した。年齢や体格などの個体差を反映しても安定した再現性が得られた。結論 本手法は、創薬初期段階における薬物動態予測を効率化し、動物実験の削減にも寄与し得る有望なアプローチである。新規化合物評価や個別化医療への応用が期待される。定量的に予測できる点にある。従来の数理モデルでは、多くの仮定に基づく解析が必要であり、複雑な非線形関係や化合物ごとの個体差を十分に捉えることが難しかった 5)。しかし、AI は大量のデータから特徴を自動的に学習し、非線形かつ高次元な関係をモデル化できるため、従来の手法では困難であった予測が可能となる 6)。 医薬品の体内動態(pharmacokinetics:PK)は、薬物が体内でどのように吸収・分布・代謝・排泄されるかを示す重要な情報であり、創薬の成否に直結する。特に、血漿中濃度の時間変化(濃度 –時間曲線)は、薬効や副作用のリスク評価に欠かせない指標である。しかし、これを得るには動物実験やヒト試験での繰り返し採血・分析が必要であり、多くの労力と費用がかかる。Key words:母集団薬物動態、機械学習、レミフェンタニル、バーチャルデータセット、実臨床データセット鳥取大学医学部保健学科(元:京都大学大学院医学研究科)機械学習による臨床血漿中薬物濃度推移予測 - レミフェンタニル バーチャルおよび実臨床データへの適用Machine learning-based prediction of clinical plasma drug profiles: application to remifentanil virtual and clinical data78 近年、人工知能(AI)技術の進展は著しく、医薬品開発のさまざまな過程への応用が急速に広がっている。従来の創薬研究では、候補化合物の探索、薬理評価、毒性試験など多くの段階で膨大な実験と長い開発期間が必要であった 1)。このため、新薬の開発には多大なコストと時間がかかり、製薬企業だけでなく社会全体においても効率化が求められていた 2)。AI の活用により、こうした作業の一部を自動化・効率化できる可能性が示されており、特に創薬初期段階でのスクリーニング作業や体内動態予測への応用が注目されている 3,4)。 AI の大きな利点は、分子構造や物理化学的性質などの情報から、薬物の効果や安全性を事前に岩田 浩明*1
元のページ ../index.html#94