臨床薬理の進歩 No.47
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結  論特発性上葉優位型肺線維症(iPPFE)に対するアナモレリンの有効性と安全性の検討49ミンおよびトランスフェリンの上昇は蛋白合成能および全身栄養状態の改善を反映している。これらの所見は、がん悪液質を対象とした先行研究と同様の傾向を示しており 9,10)、アナモレリンが iPPFEにおいても食欲増進と蛋白合成促進の両面から悪液質を改善し得ることを示唆する。悪液質を伴う呼吸器疾患では、低栄養と筋萎縮が悪循環的に進行することが知られており、アナモレリンはこの病態連鎖を断ち切る新たな治療介入として臨床的意義を有すると考えられた。 mMRC 息切れスコアおよび K-BILD スコアの改善は、呼吸困難および呼吸器関連 QOL の改善を反映している。これらの改善は、筋力および栄養状態の改善に伴う身体活動量の増加、あるいは全身倦怠感や抑うつ感の軽減に起因する可能性がある。呼吸器関連症状は肺の線維化の程度のみでなく、筋肉量や栄養状態にも影響を受けるため、アナモレリンは肺外要因の是正を通じて症状緩和に寄与したと考えられる。さらに、FSSG スコアの改善は胃食道逆流症状の軽減を示唆しており、グレリン様作用による消化管運動促進効果が関与している可能性がある。これらの変化によって、食欲および摂食行動の改善をさらに促進し、悪液質改善効果に相乗的に寄与したと考えられる。 iPPFE 患者を対象とした本研究では、有害反応として肝機能障害、浮腫、消化器症状が 1 例ずつ認められたが、いずれも非重篤であった。肝機能障害の発現率は 5.6%であり、添付文書に記載されている 6.4%とほぼ同頻度であった 12)。アナモレリンの注意すべき有害反応としては、肝機能障害のほか、刺激伝導系抑制や糖尿病の悪化・高血糖が報告されているが、Grade 2 以上の房室ブロックや高血糖は確認されなかった。肺炎を発症した 1 例は原疾患に起因するものであり、薬剤との因果関係は否定された。これらの結果から、iPPFE 患者においてもアナモレリンは良好な安全性および忍容性を有することが示唆された。 本研究は、既存薬であるアナモレリンを用いて、希少疾患の iPPFE という新たな疾患領域に応用する「ドラッグリポジショニング」の概念を臨床的に検討した初の報告である。食欲・悪液質スコアの改善に加え、体重、筋肉量、栄養指標、呼吸器関連QOL など多面的な指標で改善を認めたことは、アナモレリンが iPPFE における悪液質治療薬として有望であることを示している。さらに本研究の成果は、iPPFE のみならず、慢性閉塞性肺疾患や非結核性抗酸菌症など、悪液質を伴う他の慢性呼吸器疾患への適応拡大につながる可能性を示唆する。また、アナモレリンによる薬物療法に加え、栄養療法やリハビリテーションを組み合わせることで、慢性呼吸器疾患に対する包括的管理戦略を構築できる可能性がある。 本試験は単群・非盲検の探索的試験であり、プラセボ効果や観察者バイアスを完全に排除することは困難である。症例数も 19 例と限られており、統計的検出力に制約がある。しかし、希少疾患を対象とした探索的試験として、アナモレリンの臨床的有用性を初めて実証した点は極めて重要であると考える。現在、効果の再現性および予後改善への寄与を検討するために多施設による無作為化プラセボ対照試験を計画中である。また、本研究でのアナモレリンの投与期間は 8 週間と短期間であったため、長期投与時の安全性、心血管系および糖代謝への影響を確認する必要もある。加えて、治療反応性を予測するバイオマーカーを確立し、合理的治療の展開が期待される。 アナモレリン 100 mg を iPPFE 患者に 8 週間投与した結果、血中 GH および IGF-1 の上昇とともに、食欲・悪液質スコア、体重、除脂肪体重が増加した。

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