対象と方法HAMにおけるクロマチン構造異常を介した炎症促進機序の解明と新規治療法の開発2 つの疾患像をもたらす分子機序は、依然としてIFN-γ高産生の感染細胞がアストロサイトを刺激る 8)。一方、炎症性疾患におけるクロマチン構造現型を伴うモノクローナル増殖が顕著となる。単一のウイルス感染が、このような表現型の異なる未解明である。 感染細胞の遺伝子発現プログラムの差異は、HAM と ATL における異なる病態基盤を規定する主要因であると考えられる 5)。たとえば、HAMの感染細胞は ATL と比較してウイルス遺伝子HTLV-1 Tax の発現が高く、その結果、IFN-γの過剰産生を伴う Th1 様細胞へと転化し、Th1 応答が優勢な慢性炎症環境を形成する 6)。脊髄組織では、して CXCL10 産生を促し、感染細胞および炎症細胞のさらなる集積を誘導する 7)。この正のフィードフォワード・ループが HAM の病態基盤であり、異常分化した感染細胞は明確な治療標的と位置づけられる。しかしながら、感染細胞がこの異常表現型へ移行するエピジェネティック基盤は十分に解明されていない。 多くの悪性腫瘍において、クロマチンリモデリング因子の体細胞変異がクロマチン構造の異常を惹起し、腫瘍進展を促進させることが示されてい異常の病態的意義は未だ限定的にしか理解されていない。われわれは以前、HTLV-1 感染がクロマチン再構築とエピジェネティック破綻を誘導し、白血病化に寄与しうることを報告した 9)。この知見を踏まえ、HAM の感染細胞においても疾患特異的なクロマチン構造異常が生じ、炎症促進遺伝子の異常活性化を介して病態形成に寄与する、という仮説を立てた。 本研究では、この仮説を検証すべく、HAM 患者検体に対して遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティを同時に取得するシングルセルマルチオーム解析を実施し、HAM の疾患活動性バイオマーカーと統合して解析を行った。その結果、ウイルス – 宿主相互作用が炎症病態を促進する新規エピジェネティック機構を明らかにし、同機序を標的とする治療戦略の可能性を見出した。患者由来サンプル HAM 患者(n = 35)および無症候性キャリア(n = 3)の末梢血中単核細胞(PBMC)は Pancoll(PANBiotech GmbH、 Aidenbach、 Germany)により回収された。HAM 患者の脳脊髄液は腰椎穿刺により採取された。HAM の診断は WHO のガイドラインに基づいて執り行われた。この研究は、聖マリアンナ医科大学(承認番号 1646)および東京大学(承認番号 19-51、18-265)の研究倫理委員会の承認を得た上で、すべての研究参加者にインフォームドコンセントが行われ、実行された。シングルセルマルチオーム解析 シングルセルマルチオームライブラリーは、Chromium X と 10x Genomics Chromium Next GEM Single Cell Multiome ATAC plus Gene Expression kit(共に 10x Genomics 社)を用いて生成された。ラ イ ブ ラ リ ー は NovoSeq 6000 system(Illumina)によりシーケンスされ、Cell Ranger ARCv2.0.0(Cell Ranger ARC、 10x Genomics)によりプロセッシングおよびマッピングされた。出力されたデータはSeurat(v4.3.0)および Signac(v1.9.0)により解析 さ れ た。Trajectory 解 析 は、Monocle3(v1.3.7)を用いて解析された。ChIP-seq 4x106 個 の HCT-4(HAM 患 者 由 来 HTLV-1 感染細胞株)を 1/37 倍に希釈されたホルマリン液に固定し(最終濃度 1%)、SimpleChIP Enzymatic Chromatin IP Kit (#9003、 Cell Signaling Technology)35
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