臨床薬理の進歩 No.47
278/342

*1 YokoYama Yuta *2 Saito Jumpei *3 Nakamura tomoNori 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門、慶應義塾大学大学院 薬学研究科 医療薬学部門はじめに要   旨目的 小児肝移植患者における血中タクロリムス(TAC)濃度の変動、拒絶反応関連バイオマーカーおよび遺伝子多型を統合的に解析し、急性拒絶反応の発症に関連するリスク因子を探索することを目的とした。方法 国立成育医療研究センターで TAC を服用した小児肝移植患者を対象にした。母集団薬物動態解析より血中濃度時間曲線下面積(AUC0-12h)を算出した。遺伝子多型解析、IL-2 および IFN-γの発現を FACS で解析した。結果 AUC0-12h の変動幅 273 ng・h/mL 以上と移植後 30 日間の拒絶反応発症には有意な関連が見られた(p < 0.05)。拒絶群は非拒絶群と比較して、CD8+IFN-γ+T 細胞および CD4+IL-2+T 細胞の割合は高値を示した。結論 小児肝移植患者において、術後早期の AUC0-12h の変動により急性拒絶反応が起こりやすく、拒絶群では IL-2+・IFN-γ+T 細胞の割合の増加が示唆された。め、成長に伴い薬物動態の変動が起こりやすい 2)。血中 TAC 濃度の個体内変動が大きいと移植片生着率が低下することに加え、血中濃度時間曲線下面積(AUC0-12h)の個体内変動が大きいと、急性拒絶反応のリスクが増加することも報告されている 3)。 TAC は体内で CYP3A5 により代謝され、臓器移植において、レシピエントおよびドナーにおける CYP3A5 の遺伝子多型は、レシピエントの血中濃度/投与量(C/D)に影響を与えると考えられる。 プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびアゾール系抗真菌薬は CYP3A により代謝を受けるため、TAC と併用すると TAC 血中濃度が上昇することが報告されている 4)。Key words:小児肝移植、タクロリムス、PK/PD/PGx、血中濃度時間曲線下面積、急性拒絶反応慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門、慶應義塾大学大学院 薬学研究科 医療薬学部門国立成育医療研究センター 薬剤部小児肝移植後タクロリムス治療の PK/PD/PGx および免疫応答に基づく急性拒絶反応発症因子の検討Investigation of factors contributing to acute rejection based on PK/PD/PGx and immune response in tacrolimus therapy following pediatric liver transplantation260 タクロリムス(TAC)は臓器移植後の拒絶反応防止を目的としたカルシニューリン阻害剤である。TAC は有効治療域が狭く、薬物動態に大きな個人差が生じる。そのため、治療薬物モニタリング(TDM)が実施され、『免疫抑制薬 TDM 標準化ガイドライン 2018』によって有効治療域が推奨されており 1)、臨床では主に投与直前のトラフ値を測定し、得られた値に基づいて投与量を調整する方法が一般的に用いられている。 また、小児患者においては、薬物の吸収、分布、代謝および排泄に関わる臓器が発達段階にあるた 横山 雄太*1 齊藤 順平*2 中村 智徳*3 

元のページ  ../index.html#278

このブックを見る