臨床薬理の進歩 No.47
237/342

*1 Ito takahIro はじめに要   旨目的 潰瘍性大腸炎の治療経過において炎症反応の強度が変動することに着目し、炎症指標および CYP3A4、 CYP2C19 遺伝子多型とトファシチニブ(TOF)血中濃度との関連を明らかにすることを目的とした。方法 TOF および代謝物 M9 血中濃度の測定法は LC-MS/MS を用いて構築した。サンプル前処理は、メタノールによる除タンパク法を用いた。血中 IL-6 濃度の測定は ELISA 法を用いた。臨床検体の測定については、和歌山県立医科大学附属病院において TOF 治療を開始した潰瘍性大腸炎患者 6 例を対象とした。結果 CYP2C19 遺伝子型が *2/*3 の患者は 1 例存在し、CYP3A4 遺伝子型が *16/*16 の患者は存在しなかった。IL-6 濃度と TOF および M9 の用量補正 AUC0-4 とは関連を認めなかった。結論 本研究における潰瘍性大腸炎の 6 症例は臨床的寛解あるいは中等症であり、炎症状態が比較的安定していた。炎症指標である IL-6 濃度は低値であり、炎症が小康状態では CYP の発現低下に伴う血中 TOF 濃度の上昇は認められないと考えられた。は 219,685 人であった。完治に至る根治治療法は 潰瘍性大腸炎は、主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症をきたす疾患であり、炎症の悪化と改善を繰り返す特徴を有する。患者数は増加傾向であり、全国調査において 2015 年の本邦の有病者数未だ存在せず、治療の目的は活動期には炎症を速やかに抑え、寛解期には再燃を防ぎ、より長く寛解を維持させることで quality of life を向上させることである。 潰瘍性大腸炎の治療は薬物療法が中心であり、内科治療抵抗性の潰瘍性大腸炎では標準術式として大腸全摘術が施行される。薬物療法としては、5- アミノサリチル酸、副腎皮質ステロイド、インフリキシマブをはじめとした生物学的製剤などが用いられてきた。近年、中等度から重度の潰瘍性 大腸炎に対して、ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害し炎症性サイトカインの産生を抑制する分子標的薬のトファシチニブ(TOF)が保険収載され臨床 現場で使用されるようになり、治療成績は改善した。TOF の治療効果を予測する指標は明らかになっておらず、中等症あるいは重症であれば特に対象患者 を選択せずに投与されているのが実情である。2021 年 9 月、 米 国 食 品 医 薬 品 局(FDA) よ り、TOF は重篤な心臓関連有害事象、がん、血栓および死亡のリスクの上昇に関連するという海外の市販後臨床試験に基づく警告が発出され、このリスクは TOF の用量に依存することが明らかとなった。Key words:トファシチニブ、炎症、PK/PD/PGx、潰瘍性大腸炎、個別化投与設計神戸大学医学部附属病院薬剤部(元:和歌山県立医科大学薬学部)炎症マーカーと PK/PD/PGx の統合解析に基づくトファシチニブの個別化治療法の構築Personalized tofacitinib therapy based on inflammation and PK/PD/PGx219伊藤 雄大*1

元のページ  ../index.html#237

このブックを見る