臨床薬理の進歩 No.47
211/342

方  法エピゲノム編集用DNAコンストラクトの作成 DNA 切断活性をもたない変異 Cas9 と脱メチル 化 酵 素(ten-eleven translocation methylcytosine dioxygenase 1:TET1) の 酵 素 活 性 領 域 お よ び OASIS プロモーターを特異的に認識するガイド RNA(gRNA)を all-in-one システムで同時に発現するエピゲノム編集用コンストラクトを基に、OASIS プロモーター領域内で OASIS の発現制御に最も重要なDNAメチル化領域を調べるために、約800 base pair(bp)存在するOASISプロモーター内において、認識する領域が異なる gRNA を複数作成してコンストラクトに挿入した。がん細胞株の異種間移植実験 免疫不全マウスに OASIS 低発現膠芽腫由来細 胞 株 U251MG 細 胞(1 × 106 個 ) を matrigel と 混合して異種間移植した。45 日後、「エピゲノム編集用 DNA コンストラクトの作成」で作成したエピゲノム編集用コンストラクト(20 µg)をin vivo transfection 試薬 GenJet Plus(SignaGen)を用いて腫瘍周囲に直接投与し、さらに5日後に再度エピゲノム編集用コンストラクトを同様に投与後、5日経過してから腫瘍を摘出した。動物実験における倫理性 「がん細胞株の異種間移植実験」は、動物が耐えがたい痛みを伴う場合、適切な時期に安楽死措置をとるなどの人道的エンドポイントを設定し、苦痛軽減と排除を実施した。なお、全ての動物実験は広島大学および徳島大学における動物実験委員会の承認を受けた上で実施された。研 究 代 表 者 は DNA 損 傷 依 存 的 に 活 性 化 し た 実 際 に が ん を 引 き 起 こ す 遺 伝 子 の 発 現 変 動 やタイプのDNA結合ドメインが含まれており、この N末端断片が核内に移行して転写因子として機能する 8〜10)。一方で OASIS はその名称が示す通り、 元々は長期培養によってDNA複製ストレスや細胞老化、細胞周期の停止が進行しているアストロ サイトにおいてその発現が誘導されてくるタンパク質として見出された11)。しかしながらこれらの 現象において OASIS が果たす役割は不明だった。 OASISが細胞老化マーカーとしても知られるp21の発現を誘導し、細胞老化と細胞周期の停止を引き起こすことを突き止めた 12)。細胞周期の停止を誘導する OASIS の機能から、OASIS はがん抑制 因子としてのポテンシャルがあることが示唆された。 変異をまとめている米国The Cancer Genome Atlas Program13〜15) を用いてデータベース解析を実施すると、アストロサイト系統も含まれる神経膠腫 患者において、OASISプロモーターの高メチル化を伴ってその発現レベルが極度に低下している患者が多数存在することがわかった 12)。これは OASIS の発現がプロモーター領域のメチル化によるエピジェネティックな制御を受けていること、そのメチル化レベルの調節がOASISの発現を回復させ、がん化の抑制につながることを示唆している。実際に OASIS がほとんど発現していない膠芽腫細胞株 U251MG 細胞において、エピゲノム編集技術によって OASIS プロモーターを特異的に脱メチル化し、OASISの発現が回復して細胞増殖を抑制することに成功した。これら予備知見を踏まえ、様々ながん種における OASIS プロモーターのメチル化レベルとその発現を調べ、新たな 診断マーカーとしての可能性を探るとともに、がん治療ターゲットとして臨床応用につなげることを目指した研究を開始した。がん抑制因子OASISの発現を抑制するDNAメチル化領域の解析195

元のページ  ../index.html#211

このブックを見る