臨床薬理の進歩 No.47
178/342

162遺伝子多型は有意な共変量として抽出されなかったが、サンプル数を増やすことで関係が明らかになる可能性がある。In vitro では VRCZ の CYP3A4 に対する阻害活性は IC50=50 µmol/L (17.466 µg/mL) と報告され 15)、今回の推定値である 1.53 µg/mL と大きな乖離が見られた。しかし、in vivo では 400 mg/day の VRCZ 併 用 で TAC の Cmax は 2.2 倍、AUC は 3.2 倍に増加することが報告されている。既 報 で は VRCZ を 400 mg/day で 投 与 し た 際 のCYP3A4 阻害率は 0.98 と報告されており 14)、今回の推定値である Imax=1 は妥当な値であると言える。 1 日当たりの TAC 投与量 (TDD) を CL/F に組み込むことで TAC モデルの精度は向上した。TAC 投与量は TDM で調節されていることから、実測値が目標血中濃度域に収束する方向に調整されることが原因と考えられる。既報ではエベロリムスの薬物動態解析に TDD を共変量とした例が報告されている 15)。エベロリムスと比較して TACは TDM による投与量調節頻度が高いため、血中濃度の変動における TDD の影響がより大きいと考えられる。しかし、TDD は事後的に得られる情報であり、投与前情報のみを用いた投与設計には活用謝  辞利益相反できない。PGx 情報の活用に加え、TDM での個別投与設計が必要不可欠であり、TDD を含むモデルは実際の臨床現場における有用性に限界がある点に注意が必要である。 多剤併用状態にある移植患者の大部分で、PGxパネル検査結果が複数の薬剤の処方設計に利用できることが示された。また、TAC と抗真菌薬との相互作用を複数の PGx 情報をモデルに組み込むことでより正確に記述することが可能となった。以上から移植患者への薬物療法の個別化・精密化における PGx パネルの有用性が示唆された。 本研究を実施するにあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深く感謝申し上げます。また、本研究にご協力いただきました患者様に御礼申し上げます。 本研究に関して開示すべき利益相反はありません。

元のページ  ../index.html#178

このブックを見る