要 旨目的 複数の薬物動態関連遺伝子多型を網羅的に測定するファーマコゲノミクス (PGx) パネル検査の臨床的有用性を明らかにすることを目的とした。方法 京都大学医学部附属病院で肺、肝、造血幹細胞移植を受けた患者 182 例を対象として移植周術期における処方を解析した。また、肺移植患者 34 例を対象としてタクロリムスとアゾール系抗真菌薬との相互作用を記述する母集団薬物動態解析を行った。結果 観察期間中に 2 種類以上の薬理遺伝子に関連する処方を受けた患者は移植種別によらず 85% 以上と高い割合で存在した。タクロリムスとイトラコナゾール、ボリコナゾールの相互作用を記述する母集団薬物動態モデルでは、CYP3A5 および CYP2C19 の遺伝子多型を組み込むことであてはまりが改善した。結論 多剤併用状態にある移植患者の大部分で、PGx パネル検査結果が複数の薬剤の処方設計や相互作用予測に活用できる可能性が示された。Key words:ファーマコゲノミクス、網羅的解析、臓器移植、個別医療、ファーマコメトリクス京都大学医学部附属病院 薬剤部*1 Hira Daiki 同 上*2 kotani kinuka *3 katsube Yurie 同 上*4 nakagawa sHunsaku 同 上*5 teraDa tomoHiro 同 上移植患者に対する薬物動態関連遺伝子多型の先制的網羅的解析Pre-emptive pharmacogenomics panel analysis in transplant patients155はじめにような状況では、複数の遺伝子多型を網羅的に調べる PGx パネル検査を治療前に先制的に実施することで、医薬品の処方時に迅速に情報を参照することができ、臨床的・経済的恩恵を被ることが期待できる 2)。これまでに当研究室では、日本人に特化した PGx パネルを構築してきた(表 1)3)。そこで、本研究では移植後の薬物療法におけるキードラッグであるタクロリムス (TAC) の薬物間相互作用マネジメントに着目し、PGx パネルの有用性調査を実施した。 TAC は移植患者における拒絶反応の抑制に欠かせない免疫抑制薬であるが、体内動態の個体間・個体内変動が大きい。そのため、血中濃度を至適平 大樹*1 小谷 絹花*2 勝部 友理恵*3 中川 俊作*4 寺田 智祐*5 薬物代謝酵素や薬物トランスポーターなどの遺伝子多型は薬物動態変動因子として知られており、遺伝子多型検査に基づいた個別化投与を行うファーマコゲノミクス (pharmacogenomics:PGx) に注目が集まっている 1)。移植患者は免疫抑制薬に加え、感染予防のための抗微生物薬など多様な薬が処方されるため、しばしば多剤併用となり、薬物間相互作用のリスクが高い状態にある。多くの研究で単一の遺伝子多型と薬剤との関係性が報告されているが、多剤併用状態の患者ではさらに複数の遺伝子多型を評価することが求められる。この
元のページ ../index.html#171