考 察 本 研 究 で は、 こ れ ま で ATG16L1T300A 変 異 を autophagy)を介して lysozyme 顆粒を分泌すること病 感 受 性 遺 伝 子 と し て ATG4C が 同 定 さ れ 22)、有する欧米人クローン病患者に特異的と考えられて いたパネート細胞数の減少・分泌顆粒の異常 4) が、日本人のクローン病患者でも認められ得ることを 示した。欧米人と日本人では遺伝的背景が大きく 異なることを考慮すると、これらの異常は ATG16L1以外の遺伝因子に起因している可能性がある。 パネート細胞は分泌型オートファジー(secretory が知られており 20)、その機能にはマウスにおいてAtg5、 Atg7、 Atg16L1 など複数のオートファジー関連遺伝子が必須である 21)。さらに最近のゲノムワイド関連解析(GWAS)では、新たなクローンオートファジー機構の破綻とクローン病の強い関連が明らかにされた。実際に、LRRK2 という別のオートファジー関連遺伝子が、一部の日本人クローン病患者におけるパネート細胞異常と関連することも報告されている 23)。したがって、日本人クローン病患者に特有の感受性遺伝子を探索するためには、 将来的に大規模な遺伝学的解析が必要と考えられる。 本研究では、クローン病患者では潰瘍性大腸炎患者と比較して回腸末端部のパネート細胞数が有意図 8 ヒト小腸オルガノイドを用いた解析(A) 非クローン病 (non-CD) およびクローン病 (CD) 患者由来の小腸オルガノイドを TNFαで 48 時間刺激後、生細胞をHoechst33342 ( 青色 )、死細胞を Propidium Iodide ( 赤色 ) で染色し、蛍光顕微鏡により撮影した代表的な解析像。スケールバー:100 µm。(B) 定量 PCR 法による ATO1 遺伝子の発現解析結果。N=2 per each、 Mean with SEM。AB日本人のクローン病患者におけるパネート細胞異常の解析に減少していた。臨床的には、両者の分類が困難な「不定型大腸炎(indeterminate colitis)」と呼ばれる症例が存在する 24)。本研究の結果から、回腸パネート細胞の減少は、潰瘍性大腸炎と大腸限局型クローン病(colonic Crohn’s disease)を鑑別する上で有用な指標となる可能性が示唆された。 一方で、パネート細胞顆粒の異常は、先行研究 4)に比べてクローン病に特異的ではなかった。この差異には、欧米人と日本人という解析集団の違い に 加 え、 免 疫 蛍 光 染 色 に お け る 技 術 的 ア ー チ ファクトが影響した可能性がある。したがって、本研究で用いている改良版の評価基準(modified criteria)は、日本人クローン病患者のパネート 細胞異常をより適切に評価する上で有用と考えられる。 本研究では、クローン病群と非クローン病群で、回腸における杯細胞数に有意差を認めなかった。一方、多くの研究が示すように、杯細胞の機能障害もクローン病の病態に深く関与している 17)。したがって、今回のコホートでは空腸や大腸といった回腸以外の部位で杯細胞が影響を受けている可能性があり、杯細胞およびその他の腸上皮細胞の役割についても今後さらに詳細な解析が必要である。 現時点では、日本人クローン病患者において回腸パネート細胞がどのように減少するのかを直接的151
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