臨床薬理の進歩 No.47
160/342

①②図 1 パネート細胞の機能小腸陰窩(crypt)の模式図。パネート細胞は主として小腸の陰窩に存在し、①抗菌ペプチドを分泌して腸管内を病原性微生物から防御すると共に、②腸管幹細胞に増殖因子を供給することで腸管上皮の維持に寄与する。クローン病患者では、パネート細胞内の分泌顆粒に形態異常がみられ、予後不良因子である可能性が示されている 8)。これまで当研究グループでは、ATG16L1 がマウスおよびヒトのパネート細胞を含む腸上皮細胞を「ネクロプトーシス(プログラム されたネクローシス)」から保護することを報告してきた 9〜11)。これらはクローン病の病態にパネート 細胞のネクロプトーシスが関与していること、パネート細胞死の抑制がクローン病の新たな治療ターゲットとなり得ることを示す画期的な成果であり、従来の免疫抑制薬とは一線を画す新たな治療戦略の創出にもつながる。 本研究では、我が国有数のクローン病患者が通院する東京科学大学病院 IBD センターの臨床サンプルを活用して、ATG16L1T300A 変異が極めて稀である日本人のクローン病患者においてもパネート細胞の異常が存在するかどうかを検証する。144主要なタイプであり、日本には 22 万人を超える患者が存在するとされる。潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)は主に大腸粘膜にびらんや潰瘍を形成し、慢性的な炎症が持続すると大腸癌を発症することもある 3)。 クローン病の病態形成には、遺伝的要因と環境要因の双方が関与している。細胞内分解系のオートファジーに必須の遺伝子である ATG16L1 はクローン病の疾患感受性遺伝子の 1 つであり、パネート細胞顆粒の分泌機能に関与する 4〜6)。パネート細胞は小腸、特に回腸の陰窩底部に局在する高度に分化した上皮細胞であり、抗菌ペプチドを分泌して腸管内を病原性微生物から防御し、腸管幹細胞に増殖因子を供給することが報告されている(図 1)7)。 このように、パネート細胞は腸管恒常性の維持に不可欠であり、国内外の多くの研究グループがパネート細胞異常とクローン病との関連を報告 し て い る。 実 際、ATG16L1T300A 変 異 を 有 す る

元のページ  ../index.html#160

このブックを見る