考 察進させ、遊走や浸潤能などを悪化させた 12)。一方で、Sema6D の発現低下は乳がんの化学療法抵抗性と予後不良の両方と相関するとした報告もある 13)。しかしながら、がん微小環境における Sema6D の発現が抗腫瘍免疫に与える影響についてはこれまで報告がなかった。本研究によって、がん微小環境において Sema6D は主に腫瘍細胞と線維芽細胞に発現し、CD8 陽性 T 細胞の活性化と増殖を抑制することで抗腫瘍免疫を阻害することが明らかとなった。 これらの結果から、がん微小環境における免疫セマフォリン分子はがん免疫療法における新規BM および治療標的として有用と考えられた。特に、その発現を制御するメカニズムを解明することで新規治療法の開発につながる可能性があり、本研究でも化合物ライブラリを用いたスクリー ニングを検討した。しかしながら、網羅的解析には ハイスループットの同定系が必要不可欠であるが、 市 販 の 抗 Sema6D 抗 体 で は 細 胞 株 に 発 現 す るSema6D をフローサイトメトリーで安定的に同定することができなかった。そこで本研究において、 Sema6D を同定する抗体の作製を行った。作製した抗体はフローサイトメトリーおよび免疫染色によってヒト Sema6D を安定的に同定し、免疫染色の結果は免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する BM となる可能性が示された。今後は更に検体数を増やして有用性を検証する予定である。また、作製抗体により細胞株を用いてハイスループットに Sema6D の発現を同定し、化合物ライブラリ等を用いたスクリーニングが可能となった。Sema6D の発現を変動させる薬剤を見出すことで新規治療法の開発につながる可能性があり、現在解析を続けている。120の発現があると予想される細胞株に対し、得られた抗 Sema6D 抗体を用いてフローサイトメトリーを 行ったところ、発現を同定することが可能であった (図 4B)。続いて、同抗体を用いて臨床検体の免疫 染 色 を 行 っ た。 公 開 デ ー タ ベ ー ス(The human protein atlas)を用いた解析から SEMA6D は頭頸部 腫瘍以外に神経内分泌腫瘍、膵がん、胃がんなどに高発現であることが見出されたため、今回の解析では肺の神経内分泌がんの中で最も一般的である小細胞肺がんの検体を用いた。その結果、自験例の小細胞肺がんにおいて、Sema6D の免疫染色が可能であった(図 4C)。また、その陽性率は 77%(41例 /53 例)と高く、その発現は ICI の治療効果と逆の相関を示した(図 4D)。 これらの結果から、我々が作製した抗 Sema6D抗体を用いた免疫染色は ICI の効果を予測する新規BM となる可能性がある。さらに、本抗体を使用することで細胞株を用いたハイスループットのSema6D 発現同定を可能とする実験系が樹立された。 我々は以前に、がん微小環境に発現する Sema4Aは、腫瘍内の CD8 陽性 T 細胞に対し mTORC1 活性の上昇、ポリアミン生合成の促進を介して増殖能と細胞障害活性を高めていることを報告した 11)。一方で、本研究ではがん免疫抑制的に働く免疫セマフォリン分子として Sema6D の機能と免疫学的特性、さらに ICI の治療感受性に対する影響を明らかにした。 がん細胞における Sema6D の内因性機能を評価した報告は過去に存在する。例えば、ヒト乳がん細胞株における Sema6D の過剰発現は、細胞周期および上皮間葉転換に関連する遺伝子の発現を亢
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