対象と方法示すが副交感神経の影響も受ける混合成分である。HF は呼吸性変動に由来し、副交感神経(迷走神経)活動の代表的指標とされる。また、LF と HF の比(LF/HF)は交感・副交感神経のバランス指標として用いられ、交感優位時に上昇し、迷走神経優位時には低下する傾向を示す。 これら時間領域および周波数領域の指標を組み合わせることで、短時間の状態変化から 24 時間の恒常性調節まで、自律神経反応を多層的に評価することが可能となる。一般的に、ストレス負荷が加わると RMSSD や SD1 など多くの HRV 指標は低下することが知られており、成人では HRV 解析は疲労やストレスを客観的に定量化できるツールとして利用されている。早産児でも痛み刺激によるHRV の変化は研究が行われており、成人と同様の所見(RMSSD と SD1 の低下)が報告されている。また、早産児では在胎週数が若いほど HRV 指標が低値を示し、とくに SDNN や SD2 が顕著に低値であることが報告されており、生後は修正週数とともに上昇するとされている 6)。 これらから、本研究では、カフェイン維持投与の増量(8 mg/kg/day 以上)が早産児にとってストレスとなるかを客観的に評価するために心拍変動解析を用いてストレス時の反応所見(RMSSDと SD1 の低下)の有無を検証した。対象 対象は 2024 年 1 月から 2025 年 10 月の間に当院新生児集中治療室(NICU)に入院し、カフェイン療法を導入した早産児 20 例である。生後早期から心拍変動データを継続的に取得し、初回投与(ローディング)後、維持投与開始後、および増量後7 日目の 3 時点で解析を行った。増量後 7 日目を解析時点に設定したのは、先行解析においてこの106する心拍間隔(R–R 間隔)の揺らぎを解析することで、自律神経活動を非侵襲的に評価する生理学的指標である。心拍は洞結節を介して交感神経および副交感神経(迷走神経)の影響を受けており、そのトーヌス変化が拍動間隔の微細な変動として現れる。したがって、HRV は中枢および末梢の自律神経制御を反映するものであり、成人においては循環調節、ストレス応答、薬理作用の評価などに広く利用されている 4)。また、胎児期から新生児期に至る発達段階では自律神経系が未熟であるため、自律神経成熟過程、睡眠・覚醒リズム、ストレス反応などの生理的変化の指標として応用されている 5)。 HRV 解析には大きく時間領域解析と周波数領域解析の 2 つの手法がある。時間領域解析は、一定時間内における心拍間隔のばらつきを統計的に評価する手法で、複数の指標がある。SDNN(standard deviation of normal-to-normal intervals)は交感・副交感両系を含む全体的な調節能を表し、RMSSD(root mean square of successive differences)や SD1は隣接する心拍間隔の短周期変動を示し、主に副交感神経活動、特に迷走神経の反応を反映する。SD2 はより長周期の心拍変動を捉え、交感・副交感両系の統合的な変化を表す。このように、時間領域指標を用いることで自律神経活動を短期的および長期的スケールの双方から多面的に把握することが可能となる。 周波数領域解析は、R–R 間隔変動をフーリエ変換あるいは自己回帰(autoregressive)モデルによってスペクトル解析し、そのパワーを周波数帯ごとに分解する。得られる主な周波数成分には、0.0033 〜 0.04 Hz を中心とする極低周波成分(VLF)、0.04 〜 0.15 Hz の低周波成分(LF)、および 0.4 〜 1.5 Hz の高周波成分(HF)があり、それぞれが異なる生理学的機構を反映している。VLF は体温調節やレニン-アンジオテンシン系など代謝的・ホルモン的調節機構に関連し、LF は主に交感神経活動を
元のページ ../index.html#122