逆確率を用いた重み付けを行った。プロペンシティスコアは、嫌気性細菌に作用する抗微生物薬の使用確率として、各患者の年齢、性別、プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール、または、ボノプラザン)の併用、集中治療室への入院、および、入院時に測定された検査値(総ビリルビン、血清クレアチニン、血小板)からロジスティック回帰モデルを用いて算出した。その後、プロペンシティスコアの逆確率を算出し、前述のモデルにおいて重み付けを行った。 データは、連続変数については平均値 ± 標準偏差で、カテゴリー変数については数値または割合で表した。平均値または割合の比較は、対応のないt検定またはFisherの正確確率検定により行った。検定による有意水準が5%未満の場合、有意な差とみなした。動物モデルを用いた妥当性の評価 薬物の投与 BALB/c雄性マウス(9週齢)に対して、アンピシリン(300 mg/kg/日)またはピペラシリン・タゾバクタム(2100 mg/kg/日)を3日間絶食下で1日1回腹腔内投与した。3日目の投与から24時間後に絶食を解除した。対照群には生理食塩水を投与した。実験期間中、マウスはSPF環境下で飼育された。投与開始から4、7、10日目にマウス盲腸の内容物を採取した。盲腸内容物中の酢酸、プロピオン酸、および、酪酸量は臨床研究で用いた方法と同様の方法で測定した。マウス便の水分含有割合は、採取した便を90 ℃で7時間静置して乾燥させ、乾燥前後の質量差から算出した。各測定値については、多重比較により投与前における値と比較した。検定による有意水準が5%未満の場合、有意な差とみなした。本研究は、京都大学動物実験委員会による審査・承認を受けた上で実施した(Medkyo 23107)。Iantibioticsは抗微生物薬使用に関するダミー変数、82抗微生物薬うち、次の薬剤は腸内の嫌気性細菌に対して作用を示すものと仮定した:ベンジルペニシリン、アンピシリン、アンピシリン・スルバクタム、ピペラシリン、ピペラシリン・タゾバクタム、アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸、セフメタゾール、メロペネム、クリンダマイシン、および、メトロニダゾール。 有害反応の発現状況の評価 入院日から14日目までの期間において下痢、高ビリルビン血症、血清クレアチニン上昇、白血球減少、および、血小板減少の発現有無を調査した。下痢は1日3回以上の排便と定義した。全症例で入院日に下痢は認められなかった。高ビリルビン血症、血清クレアチニン上昇、白血球減少、および、血小板減少はCTCAE ver. 5に基づいて評価した。 統計分析 すべての統計解析はRソフトウェア(ver. 4)を用いて行った。便中における17種類の代謝物のデータを用いて主成分分析を行い、群間の類似度はadonis testにより評価した。抗微生物薬が便中の代謝物量に及ぼす影響は、下記の線形回帰モデルを用いて推定した。 ln(Cpost) = α + βln(Cpre) + γIantibiotics + ε ここで、Cpostは2回目に採取された便中の代謝物量、Cpreは1回目に採取された便中の代謝物量、αは切片の推定値、βとγは固定効果の推定値、および、εは残差とした。Iantibioticsは、嫌気性細菌に作用する抗微生物薬が投与された場合を1、それ以外の抗微生物薬が投与された場合、または、抗微生物薬が投与されなかった場合を0とした。個人差を調整するためにCpre をモデルに組み込んだ。嫌気性細菌に作用する抗微生物薬による便中代謝物量の変化率はexp(γ)によって推定し、95%信頼区間についても算出した。また、潜在的な交絡の影響を調整するため、プロペンシティスコアの
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