*1Yamamoto NaNae 九州大学病院薬剤部*2tsuchiYa Yuichi *3Yamamoto takeshi 久留米大学医学部感染医学講座基礎感染医学部門*4ieiri ichiro はじめに要 旨 同 上九州大学病院薬剤部目 的 整腸剤や発酵食品には多量の細菌が含まれており、これらの細菌が薬物代謝能を持つ場合、併用によって薬物動態に影響を与える可能性がある。本研究では、これらの細菌と薬物間の相互作用を体系的に理解し、臨床応用を進めることを目的とする。方 法 整腸剤および発酵食品から分離した細菌について、薬物代謝能スクリーニングを行った。さらに健康成人およびマウスにおいてスクリーニングでの結果を検証した。結果・考察 In vitroおよびマウス実験では複数の細菌−薬物の組み合わせにおいて、プロドラッグの修飾が外れるなどの薬物の代謝が見られた。一方、健康成人における検討では整腸剤と薬物との併用で薬物血中濃度に有意な変化は見られなかった。それぞれの検討で用いた菌数の違いが影響していると考えられた。結 論 整腸剤、発酵食品に含まれる細菌の中に薬物の代謝活性を持つものが見出されたが、実際の薬物血中濃度に影響を及ぼすか否かは摂取する菌数に影響を受ける可能性が示唆された。医薬品の約3分の2がいずれかの細菌によって分解されたという報告4)があることから、それ以外の多くの医薬品についてもその体内動態に腸内細菌の代謝活性が一定の影響を示すことが予想される。 一般に医薬品に対する腸内細菌の代謝活性は糞便中に医薬品を添加しその変化を見るというex vivoの実験系を採用している場合がほとんどである。しかしながら医薬品の吸収部位となる小腸上部は糞便中とは菌叢構成が大きく異なり、菌数も大幅に少ない(糞便中が 1011/g であるのに対して102/g 程度)5)。そのため、腸内細菌の薬物代謝への関与は限定的であり、その影響を受けるのはごく一部の医薬品であるという意見もある。一方で、整腸剤Key words:整腸剤、発酵食品、PK/PD、TDM、薬物動態整腸剤および発酵食品由来細菌が医薬品の PK/PD に与える影響についての検討Influence of bacteria from medicinal probiotics and fermented foods on drug pharmacokinetics and pharmacodynamics山本 奈々絵*1 土谷 祐一*2 山本 武司*3 家入 一郎*4 医薬品の体内動態の個人差は大きく、その薬効や副作用発現に大きく影響する。この個人差を規定する因子として、薬物代謝酵素や薬物吸収に関わるトランスポーターの遺伝子多型が知られているが、近年、腸内細菌の代謝活性が関与するとの報告も散見される。その一例として腸内細菌によるジゴキシンの不活化1)やスルファサラジンの活性化2)、イリノテカンの毒性発現3)などがあるが、これらごく一部の医薬品を除いて体系的な理解は進んでいない。しかしながらヒト腸内細菌叢由来の細菌株による薬物の代謝能力を測定した結果、対象とした71
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