*1Fujino Takeo *2Suenaga TomoyaSu 九州大学病院循環器内科*3HaSHimoTo Toru 同 上 同 上*4iSHikawa yuSuke *5SHinoHara keiSuke 同 上*6maTSuSHima SHouji 同 上*7komman HiToSHi *8ToyoSawa maSayo 同 上*9ide Tomomi *10TSuTSui Hiroyuki 同 上*11SHioSe akira *12kinugawa SHinTaro 九州大学病院循環器内科はじめに要 旨九州大学大学院医学研究院重症心肺不全講座、九州大学病院循環器内科九州大学病院看護部九州大学病院循環器内科九州大学病院心臓血管外科目的 貧血は心不全の重要な併存症であるが、重症心不全における貧血の意義は不明である。本研究は重症心不全における貧血の臨床的意義を解明することを目的とした。方法 九州大学病院で2011年から2022年までに心臓移植登録を行い、静注強心薬や機械的補助循環を必要としない患者を対象とした。対象患者を移植登録時のヘモグロビンの中央値で2群に分け、移植登録後1年間の生存率、心不全入院回避率を比較した。結果 対象は38名の心不全患者で、男性27名、年齢49.1 ± 10.8歳であった。ヘモグロビンの中央値は12.9 g/dLであった。移植登録後1年間で死亡した患者はいなかった。1年間の心不全入院回避率は、ヘモグロビン低値群で有意に低かった(40.9 vs 81.9%、p=0.020)。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、ヘモグロビンは心不全入院の有意な予測因子であった(オッズ比0.70、95%信頼区間0.49−0.97、p=0.030)。結論 ヘモグロビンは重症心不全患者の心不全入院を予測する因子であった。また、貧血は慢性心不全の独立した予後不良因子である。ANCHOR研究では、慢性心不全患者においてヘモグロビン12.0~12.9 g/dLでは13.0~13.9 g/dLと比較して入院リスクが12%増加し、ヘモグロビン9.0 g/dL未満では2倍に増加していた4)。 鉄欠乏は慢性心不全患者の最大50%に合併するとされ、運動耐容能や生活の質と関連している5)。 Key words:重症心不全、心筋症、心臓移植、貧血、鉄欠乏心臓移植待機中の重症心不全患者においてヘモグロビンは心不全入院の予測因子となるHemoglobin level can predict heart failure hospitalization in patients with advanced heart failure awaiting heart transplantation without inotropes or mechanical circulatory support藤野 剛雄*1 末永 知康*2 橋本 亨*3 石川 裕輔*4 篠原 啓介*5 松島 将士*6金萬 仁志*7 豊沢 真代*8 井手 友美*9 筒井 裕之*10 塩瀬 明*11 絹川 真太郎*12 貧血は慢性心不全に併存することが多い合併症である。慢性心不全患者の13~57%に貧血がみられる1,2)。慢性心不全における貧血の原因は、機能的または絶対的鉄欠乏、慢性炎症、エリスロポエチン合成障害、薬剤の影響など様々である3)。 47
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