臨床薬理の進歩 No.46
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 近年、日本における研究を取り巻く状況は厳しくなってきています。特に臨床研究では、人、資金、時間が限られた中で、いかに研究を継続し、日本の研究力を高めていくかが大きな課題です。医療の進歩は、基礎研究から臨床研究への地道な研究の積み重ねによって成り立っています。この歩みを止めてはいけません。短期的な成果や利益も重要ですが、人の疾病は複雑で、一朝一夕に結果が出るものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ光が見えてくるのです。若い研究者の皆さんには、しっかりとした研究の土台を築き、結果に対して誠実に向き合う姿勢を大切にしてほしいと願っています。 臨床薬理研究振興財団は2025年9月に創立50周年を迎えます。設立以来、日本の臨床薬理学の普及と臨床薬理研究者の育成を目的に、研究奨励金および海外留学助成金を交付されてきました。研究奨励金には毎年多くの応募があり、約20課題、現在では27課題が厳正な審査を経て選ばれています。薬物治療に関わる研究は多岐にわたり、その扱うテーマや研究方法も非常に幅広いものです。さらに最近では大規模データベースやAIを活用した新しい研究も展開されてきています。未来の医療を支える臨床薬理研究に期待したいところです。 本誌では2020~2022年度研究奨励金による研究報告が15編、また海外留学助成金による留学報告が2編掲載されています。テーマは多岐にわたりますが、最適な薬物治療を目指していることは共通です。新しいアイデアや多様な研究手法を取り入れた内容が多く、臨床薬理学の未来を感じさせるものばかりです。若い研究者の皆さんがさらに研究を深め、医療の発展に貢献してくださることを心から期待しています。ぜひご一読ください。最後に、これらの研究助成を支えてくださった臨床薬理研究振興財団と関係者の皆さまに感謝申し上げます。2025年4月志賀 剛ま え が き

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