臨床薬理の進歩 No.46
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p<0.05)。一方でSLFN11(+)株に対しては、チオ考  察追  記謝  辞利益相反SLFN11発現量で層別化した髄芽腫の新規治療戦略(Dunnett's test、p<0.05)、カンプトテシン、エト(低身長、甲状腺機能低下症)や高次機能障害などPrexasertibによる感受性増強作用を評価した。Elimusertib、PrexasertibはSLFN11(−)株に対しては強いシナジー効果を示し、4種類のDNA傷害剤全ての感受性を増強させた(Dunnett's test、 テパ、4HPCの2剤では感受性を増強したがポシドの感受性は変化させなかった。さらにSLFN11(−)株をマウスに移植したin vivoモデルで、Prexasertibは小脳腫瘍の増殖を抑制し(図4A、Akaluc IVIS imaging、t-test、p<0.05)、マウスの生存期間を延長した(図4B、Log-rank、p<0.05)。 本研究の結果から、個々の髄芽腫症例においてSLFN11 の発現を免疫染色で評価することで、化学療法に対する感受性を術後早期に予測可能なことが示唆された。例えば、SLFN11発現の高い髄芽腫症例では、シスプラチンを含む化学療法の感受性が高いと予想できる。現在、標準リスクの髄芽腫に対する標準治療は、全脳全脊髄照射 24 グレイとされている1)。24グレイの放射線量を 18グレイほどに減量することができれば、下垂体ホルモン異常の放射線治療による晩期障害の影響を最小限にとどめることができると期待されるが、再発率とのトレードオフになる可能性がある。再発髄芽腫の多くは致死的な経過を辿ることから、安易に一律に放射線量を下げることはできず、化学療法が十分に効果がある、放射線量を下げられる一群を早期に割り出す重要性が指摘されてきた1,4)。本研究によって SLFN11 発現が高く、化学療法に感受性の高いことが期待される症例に限っては放射線量を下げられる可能性が示された。また、本研究の結果から、SLFN11 の発現が低く予後不良が予測される症例では、通常の化学療法にATR-CHK1阻害剤を追加することで予後を改善させることも期待できる。実臨床への貢献のために、今後、前向きな臨床試験を組んでの検証が必要だと考える。 本研究の一部は、Neuro Oncology誌に発表いたしました3)。 本研究を行うにあたり研究費を助成いただきました臨床薬理研究振興財団に深謝いたします。 本研究に際し開示すべき利益相反はありません。35

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