臨床薬理の進歩 No.46
45/216

はじめに要   旨群馬大学医学部附属病院 脳神経外科*1Nakata SatoShi *2Murai JuNko 愛媛大学 生化学・分子遺伝学*3NatSuMeda MaNabu 新潟大学脳研究所 脳神経外科*4okada MaSayaSu      同   上    *5Nakata aki *6aMagaSa yuta *7yaShiMa hideaki *8araki takuya 群馬大学大学院医学系研究科 臨床薬理学       同   上       同   上       同   上Rad3-related protein, Checkpoint kinase 1(ATR-CHK1)阻害剤がSLFN11陰性髄芽腫のDNA傷害剤耐性を 髄芽腫は小児の小脳に好発する悪性脳腫瘍である。全脳全脊髄照射と大量化学療法を組み合わせ、5年生存率は70−85%程度まで改善してきたが1)、治療関連の認知機能低下、二次癌の発生が、長期生存者で問題となる。予後不良例を救済する新規治療戦略、予後良好例への適切な治療強度の選択が、同時に目的 髄芽腫は小児に好発する悪性脳腫瘍である。強力な放射線化学療法も奏効せず早期再発する症例がある一方、長期生存者では治療関連の認知機能低下が問題となる。予後不良例を救済する新規治療戦略、予後良好例への適切な治療強度の選択が、同時に求められている。Schlafen(SLFN)ファミリーのメンバーの1つ、SLFN11は多くの癌でDNA傷害型抗がん剤への感受性を規定しており、今回髄芽腫の層別化マーカーとなりうるか検討を行った。方法と結果 1)SLFN11発現量が強い予後予測能を有する、2)WNT活性化を伴う一群で強い発現が見られる、 3)プロモーター領域CpGメチル化と相関する、この3点を網羅的解析を通し示した。また、細胞株・同所性異種 移植モデルを用い、4)SLFN11の強制発現/ノックアウトがそれぞれDNA傷害剤への感受性を上昇/低下させる、 5)HDAC阻害剤によるSLFN11転写亢進がDNA傷害剤への感受性を上昇させる、6)Ataxia telangiectasia and 改善させる、この3点を示した。結論 SLFN11は髄芽腫の化学療法感受性を規定している可能性がある。陽性例への治療強度の調整、陰性例への新規治療という層別化に繋がるものと期待される。求められている。 近年、Schlafen(SLFN)ファミリーのメンバーの1つ、SLFN11がDNA傷害型抗がん剤の感受性増強因子として、注目されている2)。①SLFN11発現量が髄芽腫の治療反応性を予測するか、②SLFN11低発現の症例を新規標的治療により救済できるか、の2点を明らかにするため、本研究を行った。Key words:小児脳腫瘍、DNA損傷応答、SLFN11、ATR、CHK1SLFN11発現量で層別化した髄芽腫の新規治療戦略Risk adapted therapy for medulloblastoma stratified by SLFN11中田 聡*1 村井 純子*2 棗田 学*3 岡田 正康*4中田 亜紀*5 天笠 雄太*6 八島 秀明*7 荒木 拓也*831

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る