臨床薬理の進歩 No.46
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結  論謝  辞利益相反可能性があった。本研究結果に基づき提案した代替レジメンによるシミュレーションでは、Cmaxの中央値が1.23–1.32 ng/mLとなり、多くの患者の血清中フェンタニル濃度が目標濃度域内で推移することを明らかにした。一方、代替レジメンを適用した場合でも一部の患者は血清中フェンタニル濃度が目標濃度域を超える可能性がある。したがって、投与開始 10–20 時間後に血清中フェンタニル濃度を測定し、推定されるクリアランスに応じて投与速度を調整することが推奨される。 本研究において構築したPBPKモデルは、早産児や正期産児を含む小児および成人集団において、フェンタニルのPKに対する頑健な予測能力を示した。本モデルにより、新生児集団におけるフェンタニルのPKとADR発現との関連が明らかにされた。投与終了後の覚醒時の血清中フェンタニル濃度の中央値とADR発現の閾値に基づく代替投与レジメンは、より安全で効果的なフェンタニル療法を提供する。 本研究に助成をいただきました公益財団法人 臨床薬理研究振興財団に深く感謝申し上げます。 本研究において開示すべき利益相反はありません。Cmaxの中央値は 1.45–1.56 ng/mL であり、標準的な28病薬、抗てんかん薬の薬物血中濃度モニタリング(TDM)においては、CDrが薬物の代謝とクリアランスのばらつきを把握するための重要なツールであることが示されている 19-21)。本研究ではSpO2の重症度がCDrの上昇と相関することを明らかにし、新生児における呼吸抑制に血中濃度依存性があることが示唆された。すでに、フェンタニルの投与量のみではSpO2低下の重症度との間に相関関係がないことが知られており22)、PKパラメーターを評価する重要性が示された。フェンタニルの投与設計と血中濃度モニタリング 本研究では、対象集団の解析により得られた結果と文献の報告値を基に目標濃度域を設定した。目標濃度域の下限は、本研究で確認された覚醒時の血清中フェンタニル濃度の中央値である0.56 ng/mLに基づくものであり、鎮静が不十分であることによる早期覚醒を防ぐための下限値となる。既報では、血清中フェンタニル濃度が0.60 ng/mLを超えることで鎮痛効果が得られると報告されている8)。また、新生児のフェンタニル濃度が0.60 ng/mL付近で鎮痛効果が100%に達したとする報告もあり23)、本研究を支持するものである。目標範囲の上限は、文献による報告値を参照し1.40 ng/mLとした。1.50–3.00 ng/mL のフェンタニル濃度は、呼吸機能においてCO2の反応性を50%抑制し、特に、1.40 ng/mL以上の濃度では、換気量が12%減少したと報告されている24)。設定した目標濃度を標準的なフェンタニル投与レジメンによるシミュレーションにあてはめた結果、異なるGA群間でレジメンは目標濃度域を超えるCmaxをもたらす

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