臨床薬理の進歩 No.46
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l )Lm/gn(noitartnecnocynatneFInterquartile range2.52.01.51.00.50.0Median12345678910111213141516171819202122232425262728293031323334353637383940Patient ID考  察図3 フェンタニル投与終了後の覚醒時のフェンタニル濃度覚醒時の血清中フェンタニル濃度の中央値は 0.56 ng/mLであり、破線の水平線で示す。塗りつぶしは四分位範囲を示す。各サークルは個々の新生児の覚醒時のフェンタニル濃度を表わす。 本研究では、PBPKモデルにより新生児の血清中フェンタニル濃度を精度良く予測することに成功した。また、個々の患者特性から予測されたPKパラメーターと早産児におけるフェンタニル関連ADRの発現との関連を明らかにし、ADR発現の最小化に向けた代替レジメンの提案を行うに至った。新生児患者におけるPBPKモデルの予測精度と妥当性評価 構築したPBPKモデルは、成人におけるフェンタニルのPKに対して頑健な予測性能を示し、正期産児および早産児を含む小児集団に外挿された。モデルは全体として許容可能な予測性能を示したが、成人(ME(%) ± SE(%):1.40±1.28、RMSE(%):22.1)および小児患者(ME(%)±SE(%):−8.72±5.94、RMSE(%):36.2)と比較して、新生児集団(ME(%)±SE(%):10.2±10.2、RMSE(%):52.0)ではわずかに偏りが確認された。新生児における偏りは、新生児に特有の生理学的特性と変動性に起因すると考えられる1)。フェンタニルの代謝に おいて、その90%以上がCYP3A4を介するN-脱26た患者では1.16であった(p=0.028)。新生児に対するフェンタニルの投与設計と血中濃度モニタリング フェンタニル投与終了後の覚醒時の血清中フェンタニル濃度の中央値は0.56 ng/mL(四分位範囲: 0.16-1.02 ng/mL)であった(図3)。また、目標濃度の上限値は、ADRの発現に関する文献と本研究の実症例によるAUROC分析の結果に基づいて設定した。すなわち、本研究対象におけるADRの発現を予測するためのCmaxのカットオフ値は1.73 ng/mL、AUROCは60.1%であり参照すべき濃度として示した。また、国際法薬毒物学会(The International Association of Forensic Toxicologists:TIAFT)が提唱するフェンタニルの毒性濃度の閾値として2.00 ng/mLも参照した 17)。2 μg/kgの負荷投与に続き1 μg/kg/hを40時間持続点滴する標準的レジメンをPBPKモデルによりシミュレーションした結果、Cmaxの範囲は1.45–1.56 ng/mLであった(図4A)。一方、持続点滴の速度を0.85 μg/kg/hに変更した代替レジメンをシミュレーションした結果、Cmaxの範囲は1.23–1.32 ng/mLとなった(図4B)。

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