臨床薬理の進歩 No.46
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01goL-l euav-pRDF考  察2.003.000.00Log2 fold change1.001.501.000.500.00-3.00-2.00-1.00Down-regulated●Up-regulated●図3  投与後24週における臨床的寛解非達成患者に対する達成患者におけるデュピルマブ投与前(0週)の血漿中miRNA発現量の比較デュピルマブの治療有効性に関わるマイクロRNAの同定が制御している遺伝子や喘息の病態は、デュピルマブの治療により、早期より影響を受けている可能性があり、また治療の継続によりその変化が維持されているものと考えられる。従って、これらmiRNAは、デュピルマブの治療反応性を評価するのに有用である可能性がある。また、これらmiRNAが制御している病態を解明することで、喘息患者が難治化に至る要因や機序を明らかにすることができると考えられる。 さらに本研究では、投与後24週における臨床的寛解の達成を有効性の指標としたところ、投与開始時の血漿中miRNA発現量が有効性に関連することが示された。治療開始時において、これらmiRNA発現量をバイオマーカーとすることで、デュピルマブの有効性を予測することが可能になると考えられる。また、これら有効性と関連するmiRNAの複数がデュピルマブの治療によりその発現が有意に変動していたことから、これらmiRNAが制御する病態は、デュピルマブの治療標的として重要である可能性が考えられ、難治性喘息患者の治療最適化を図る上で有用な知見である。 本研究は、デュピルマブ投与難治性喘息患者を対象とした研究としては比較的症例数が大きいが、本研究結果は他のコホートにおいても検証されるべきであり、本研究で検証はできていないため、この点が本研究の限界である。 以上、本研究により、国内最大規模のデュピルマブ使用患者の臨床的データに基づき、デュピルマブ投与開始前の血液検体より治療有効性を判断することが可能なバイオマーカー(miRNA)を特定することができた。今後、本研究の結果を踏まえ、本バイオマーカーの有用性を検証する次期前向き臨床試験を実施することにより、臨床に広く利用できるバイオマーカーを創出することが可能となるものと期待される。さらに、本研究により見出されたmiRNAと喘息病態との関連を詳細に解析することにより、難治性喘息患者の病態の理解や新たな治療ターゲットの創出に繋がることが期待される。 8週および24週において有意な発現増加が認められた。つまり、これらmiRNA発現量は、治療効果が高い患者において発現が低く、デュピルマブの投与によりその発現が高くなるものと考えられた。 本研究において我々は、国内最大規模のデュピルマブ投与患者コホート研究により得られた血漿検体より、デュピルマブ投与後に治療経過と共に変動するmiRNAおよび臨床的有効性に関連するmiRNAを網羅的解析手法により見出した。これらmiRNAは、臨床において採取が容易で、比較的侵襲性の低い循環血を用いて評価・測定が可能であることから臨床応用に繋がる可能性が高い。また、循環血から患者の病態を評価するリキッドバイオプシーにより、治療薬の有効性を予測可能である点において、臨床的有用性は高いものと考えられる。 デュピルマブ投与後における、血漿中miRNA発現量の経時的変動を解析した結果、治療開始時より投与後8週において変動が認められたmiRNAの40%程が、投与後24週においても有意な発現変動が認められた。このことより、これらmiRNA17

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