臨床薬理の進歩 No.46
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結  果調製した192検体のライブラリは、それぞれ10 nMに希釈後、1つの溶液にプールし(終濃度 10 nM)、シーケンシング用試料とした。次世代シーケンシング解析 次世代シーケンシング解析には、NovaSeq 6000 system および NovaSeq 6000 S4 Reagent Kit v1.5(Illumina)を用いた。シーケンシングにより得られた塩基配列(シーケンシングリード)は、UDIにより検体ごとの塩基配列として整理した。シーケンシングリードデータは、python(version 3.12)を用い、Trimmomatic(version 0.39)によるアダプター配列の除去およびFastQC(version 0.12)による品質評価を行い、miRge3.0によるUMIに基づいた重複リードの除去およびmicroRNAの塩基配列データベース(miRBase_v22, Homo sapiens)に対するアライメントを行った。また、miRNAの発現量比較にはR(version 4.4)を用い、edgeR(version 4.2)による正規化および群間比較を行った。統計解析 miRNAの発現変動解析では、2群間におけるBenjamini-Hochberg法によるfalse discovery rate(FDR)が0.1未満のmiRNAを有意と判断した。患者背景データの比較においては、連続変数にはMann-Whitney U test、カテゴリ変数にはFisher’s exact testを用いた。各データは特に記載がない限り、中央値(四分位範囲, IQR)または人数(割合, %)で示した。患者背景および臨床的有効性 miRNA発現量解析の対象とした64名の難治性喘息患者の投与開始時における患者背景を表1に示した。女性患者の割合は49名(76.6%)であり、年齢の中央値(IQR)は55(48, 66)であった。GETEスコアに基づいて、投与後24週において14の5段階で評価するものであり、投与開始後24週においてExcellentおよびGoodであった患者を有効とした。また、臨床的寛解は投与開始後24週までに増悪がなく、24週時点において経口ステロイド薬の服用がなく、ACQスコア1.5未満かつACTスコア20以上、呼吸機能が正常化(予測1秒量80%以上)または安定化(実測1秒量5%以上の減少なし)した患者と定義した。血漿中miRNA抽出およびライブラリ調製 血漿中miRNA発現量解析には、投与後24週まで投与が継続され、投与0週、8週、24週において全ての評価項目データが得られた64名の血漿検体を用いた。これら64名の対象患者の0週、8週、24週の血漿検体(計192検体)より、miRNAを抽出し、次世代シーケンシング解析のためのライブラリ調製を実施した。 miRNAの抽出には、miRNeasy Serum/Plasma Advanced Kit(Qiagen)を用いた。凍結保存(−80ºC)された血漿を解凍後、遠心(15,000 g, 15 min, 4ºC)処理し、上清200 μLを抽出用検体とした。メーカー提供のプロトコルに従い抽出操作を行い、最終的にmiRNA抽出溶液18 μLを得た。 ライブラリ調製には、QIAseq miRNA Library Kit(Qiagen)およびQIAseq miRNA Index Kits with Unique Dual Index Kits(Qiagen)を用いた。miRNA抽出溶液5 μLより、3’ライゲーション反応、5’ライゲーション反応を行い、unique molecular index(UMI)を付加させたプライマーを用い逆転写反応を行い、miRNA 1分子に対して異なるUMIが付加されたcDNAを得た。cDNA溶液をクリーンアップ後、検体ごとに異なるunique dual index(UDI)を添加し、PCRによる増幅を行った。各検体より調製したライブラリのDNA濃度は、QuantiFluor ONE dsDNA System(Promega)を用い、蛍光法により定量した。また、ライブラリのサイズ(塩基数)は、マイクロチップ電気泳動装置MultiNAおよびMultiNA DNA-500キット(Shimadzu)により評価し、ライブラリの品質を確認した。

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