対象と方法(miRNA)に着目した。miRNAは、1つのmiRNAデュピルマブの治療有効性に関わるマイクロRNAの同定の個人差の要因は明らかではなく、臨床においてデュピルマブの治療選択を行うための最適な客観的指標は現在までに確立されていない。そこで、新たなバイオマーカーの構築が生物学的製剤を含めた治療選択の最適化に繋がると期待される。 そこで本研究では、国内のアレルギー疾患医療拠点病院を含む多施設共同臨床研究を実施し、国内最大規模のリアルワールドに基づいたデュピルマブ使用患者データを収集した。患者の病態的特徴と治療効果との関連を評価するため、病態マーカーとしての有用性が示されているマイクロRNAが複数の分子の転写後調節を制御しており、様々な疾患において診断や病態理解、治療応答性を規定する新規マーカーとして注目されている9)。これまでに喘息患者の病態を特徴付ける血漿中miRNA 10)や難治性喘息治療薬である抗IL-5受容体抗体ベンラリズマブの有効性指標となるmiRNA 11)が報告されている。これらにより、循環血中(血漿)のmiRNAを解析することで、気道上皮細胞や免疫反応機構などより局所の病態の違いを捉えることができると考えられる。 本研究の目的は、実臨床において難治性喘息患者におけるデュピルマブの有効性を判別するため、有効性の予測が可能なバイオマーカーを開発することである。そのために、全国の主要施設による多施設共同臨床研究を実施し、投与開始前の循環血中のmiRNAを用いた、新規有効性予測モデルを構築する。対象患者および研究デザイン 本研究は多施設、非介入、前向き観察研究であり、2019年6月より2021年5月の間に、国内の医療機関13施設において、103名の対象患者より同意を取得し、研究を実施した(iPOT4R study)。同意取得後、適格性の確認を行う4週間の前観察期間を経て、デュピルマブ投与開始後、2週間隔で計12回の投与を行い、投与開始24週間後までを観察期間とした。デュピルマブは承認された用法用量に従い、初回600 mg、その後は1回300 mgを皮下投与した。対象患者の選択基準は以下の通りとした: 同意取得時の年齢が20歳以上、80歳未満の気管支喘息患者、過去3か月において中用量以上の吸入ステロイド薬を使用しており、吸入ステロイド薬以外のコントローラーを1つ以上使用している患者、過去1年間に3日間以上の全身性ステロイド(経口または点滴静注)を要する悪化、あるいは喘息による救急受診あるいは入院を要する増悪を1回以上認めた患者、同意取得時にAsthma Control Questionnaire(ACQ)スコアが0.75以上であった患者。また、除外基準は、悪性腫瘍患者、気管支喘息治療以外で経口ステロイド薬を服用している患者、過去30日以内に他の生物学的製剤を投与された患者とした。本研究計画は、「抗ヒトIL4/13受容体モノクローナル抗体製剤の効果予測因子同定と炎症病態の時間経過の検討に関する非介入、観察研究」として、日本大学医学部附属板橋病院臨床研究倫理審査委員会において一括承認され実施された(承認番号: RK-190514-2、承認日: 2019年5月15日)。評価項目および有効性の判定 投与開始時(0週)、投与開始後2週、4週、8週、16週、24週において採血を実施し、全血、血清および血漿を得た。全血および血清検体より、各種生化学検査を実施し、血漿検体はmiRNA解析に用いた。また、採血と同じ時点において、呼吸機能検査の実施および喘息コントロール状態の評価をACQおよびAsthma Control Test(ACT)を用いて行った。さらに、経口ステロイド薬の服用状況および増悪の有無を各投与時点において評価した。 有効性の判定には、主治医による主観的評価に基づくGlobal evaluation of treatment effectiveness(GETE)スコアおよび客観的指標に基づく臨床的寛解の定義を用いた。GETEスコアは治療有効性をExcellent、Good、Moderate、Poor、Worsening13
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