*1Hirai Keita *2SHirai toSHiHiro *3Gon YaSuHiro *3iPot4r inveStiGatorS はじめに要 旨目的 難治性喘息患者に対し、生物学的製剤の有効性が期待されているが、その有効性を予測することは難しい。本研究は、抗IL-4/13受容体抗体であるデュピルマブの有効性に関連するバイオマーカーとして、循環血中マイクロRNA(miRNA)の探索を行った。方法 デュピルマブ投与難治性喘息患者を対象とし、治療開始時および投与後8週、24週の血漿よりmiRNAを抽出し、次世代シーケンシング解析を行った。結果 投与開始時との比較により、投与後8週および24週において、それぞれ65および64のmiRNAの発現変動が認められ、このうち26のmiRNAが両時点でともに変動していた。さらに、投与開始時のmiRNA発現より、投与後24週における有効性を予測可能なmiRNAが見出された。結論 循環血中miRNAにより、デュピルマブの経時的な治療応答性および有効性を判定できることが示された。のIL-4受容体αサブユニットに特異的に結合することにより、喘息の特徴的な病態である好酸球性炎症4)を抑制する新たな治療薬である5)。血中好酸球数の高い患者を対象とした第Ⅲ相試験において、デュピルマブは増悪イベントの抑制と呼吸機能の改善効果が示され6)、臨床的有用性が期待されている。このようにデュピルマブの有用性が期待されているが、治験において高い効果が得られた患者が存在する一方で、効果に乏しい患者が一定数存在していた5–7)。生物学的製剤は高価な治療薬であり、投与前に治療有効性を予測可能な客観的指標の構築が求められる。血中好酸球数がデュピルマブの有効性を予測する1つの指標と考えられているが8)、その予測精度は十分ではなく、実臨床において治療選択は大変に難しい。このように、難治性喘息患者においてデュピルマブの治療有効性Key words:デュピルマブ、バイオマーカー、マイクロRNA、難治性喘息、生物学的製剤信州大学大学院医学系研究科臨床薬理学分野、信州大学医学部附属病院薬剤部静岡県立総合病院呼吸器内科日本大学医学部附属板橋病院呼吸器内科、日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野デュピルマブの治療有効性に関わるマイクロRNAの同定Identification of microRNAs associated with the therapeutic effectiveness of dupilumab平井 啓太*1 白井 敏博*2 權 寧博*3 iPOT4R研究グループ*412 気管支喘息患者は全世界で2億4000万人、国内では450万人いると推定される。近年の治療薬の普及に伴い喘息死の数は減少傾向にあるが、一定数の患者は現行の治療法に対し抵抗性を示す難治性喘息患者とされる1)。このような患者は、救急受診や入院が必要な重度の増悪を頻回に経験し、呼吸機能が低下するなど、疾病による負荷は大きい。国内における大規模な調査では8.7%の患者が難治性喘息に該当するとされ2)、これら患者に対する最適な治療法の構築が急務とされている。 近年、難治性喘息患者に対する新たな治療薬として、サイトカインを標的とした生物学的製剤が開発されている3)。デュピルマブは、インターロイキン(IL)-4およびIL-13受容体複合体に共通
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