大戸 茂弘 臨床薬理研究振興財団設立50周年、誠におめでとうございます。永きにわたり財団を支えていただきました歴代の関係者の方々のご支援・ご指導に深く感謝申し上げます。50年の間に、臨床薬理学を取り巻く環境も大きく様変わりしました。ICH、GCP省令はもとより、製薬企業のM&A、大学の統合や合併など、世界の社会構造の変遷の中で、臨床薬理学も大きく発展しました。特に、「臨床薬理の進歩」には、世界に冠たる国際誌や学会誌に報告された研究成果が含まれ、研究分野、試験デザイン、方法も多岐にわたり、海外留学助成金は、臨床薬理学研究のグローバル化の推進に大きく貢献しました。 「臨床薬理の進歩 2025 No.46」には、2022年度研究奨励金による研究報告が12編、2021年度が1編、2020年度が2編、および2021年度と2020年度の海外留学助成金報告2編を掲載しました。2025年の4月5日に編集委員会が開催されました。毎年、編集会議の議長を務めていただいた藤村昭夫先生が辞されて、新たに志賀剛教授をお迎えしての編集作業でした。感無量です。さて、編集作業ですが、我が国における臨床薬理学の振興を目的として研究助成を行っている臨床薬理研究振興財団の理念にふさわしい優れた報告もありました。一方、昨今の臨床研究および基礎研究の進め方の重要性が社会的にも注目されている中で、報告書著者へ加筆修正をお願いする事例もありました。大賞選考に当たっては編集委員の総意に基づいて納得のいく結果を得ることができました。なかでも「抗体医薬品の抗薬物抗体の評価及び治療最適化での性別と抗菌薬併用の意義」、「新生児のフェンタニルの鎮静効果の維持及び有害反応の最小化に対する生理学的薬物動態モデリングとシミュレーションの役割」、「オートファジー誘導を介した炎症性腸疾患に対する新規治療法の開発」、「複数集団のPGx関連遺伝子バリアントの大規模アノテーションデータベースの構築」、「リアルワールドデータによるスタチン系薬剤がオキサリプラチン誘発末梢神経障害の予防薬開発に関する研究」が選ばれたことは、臨床薬理学の裾野の広がりを示すものかもしれません。また海外留学助成金による2編の報告は、臨床薬理学研究のグローバル化の推進に貢献するものでした。本研究奨励金が、研究者の大きな励みとなり臨床薬理学の振興に貢献していることを改めて実感することができました。 最後に、本誌に掲載されている報告書にはいずれも優れた研究内容が含まれており、是非、今後の研究に参考にしていただけると幸いです。2025年5月158あ と が き
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