臨床薬理の進歩 No.46
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おわりに写真5 ラボメンバーと(右から6番目 筆者、5番目 David Fox博士、3番目 Eliza)わからなければ後からメールで確認したりしました(写真5)。 ボスのDavid Fox博士は長く膠原病の臨床医で、T細胞を中心とした基礎研究にも従事してきました。さらにアメリカリウマチ学会のプレジデントなどの重要な役職も歴任されてきた先生です。現在は、ほかの診療科とも連携して関節滑膜や皮膚、血液などの患者検体を用いて膠原病や悪性腫瘍の病態解明や新規治療につながる分子機構を解明するプロジェクトを複数かかえています。David Fox博士はうまくいかないときには、なぜうまくいかないかを徹底的にディスカッションします。ラボ全体が建設的に意見を交わす文化が根付いており、私が提示した疑問についても毎週多くの時間を割いていただきました。ネガティブな意見を言わずに、前向きに、わからないことを追求する姿勢は今も心に刻まれています。 渡米まもなくは、同僚のテーマを共同で行うことに従事し、そうこうしているうちに、半年近くが経ちました。自分のテーマとして破骨細胞に関連した研究を開始しましたが、日本では当たり前のようにできていた破骨細胞の分化の実験系がうまくいかず、環境の違いによる影響に四苦八苦しました。そうして留学も1年がすぎ、そろそろ折り返しだなと思っていたころ、破骨細胞の研究が行き詰まってしまい、強皮症を主に研究しているElizaに相談しました。彼女は10個くらいのプロジェクトに参加している多忙な研究者で、私を別の研究に招いてくれました。Elizaの指導の下で強皮症の皮膚硬化におけるCD13/B1Rの役割について研究し、帰国の直前にはなんとかまとめることができました1)。破骨細胞の研究もようやくまとまり、留学生活を形に残すことができました。 改めて、家族とともに充実した研究生活を送ることができたことは、臨床薬理研究振興財団の助成のおかげです。また、駆け出しの頃から基礎研究のいろはを教えてくださり、本助成金を勧めていただいた川合先生、さらに研究の指導だけでなく、多くの業務を引き受けて私の留学をサポートしてくださった南木教授、そして医局員の先生方には心から感謝申し上げます。また、156

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