臨床薬理の進歩 No.46
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COVID-19からの円安余暇の過ごし方 私が渡米した2021年春はとても良い時期でした。COVID-19の大流行もようやく落ち着いてきて、アメリカではマスクをしている人を見かけることは少なく、スーパーマーケットのクローガーに入ると、「マスクは任意です。マスクを着用している人を差別しないように」とアナウンスされていました。検査キットはUSPS(アメリカの郵便局)から無料で配られ、ワクチンも近所の薬局やミシガン大学で気軽に受けることができました。当時のCOVID-19は日本ではまだまだ対応に追われている状況でしたので、この時期に渡米できたのはよかったと感じています。一方、恐ろしい問題はお金でした。日々いかにお金を使わないかは重要な問題でした。どの店に行ってもポイントカードを作りました。これは驚くほど値段が違います。お金のない研究者同士で情報を共有して、どのクレジットカードがよいとか、買物はたいていはCostcoだけど野菜はクローガーがよいとか、米はどこで買っているとか、そんなことを研究者同士で話しながら節約していました。また、医療費に関しては全く病院にかからないで済んだという方も多いと思いますが、無給で最低限度の保険しかついていなかった私は思い切りアメリカ経済に貢献しました。歯の大部分を削りクラウンをかぶせる治療を妻と私で合計3回行ったところ、全部で100万円。さらに、よりによって私は留学中に足の骨折を2回、リハビリにも数か月間通ったりと、医療費にも大金をつぎこむことになってしまいました。そして、2023年、気が付いたらあれよあれよと円安になってしまい、そのような折に車の故障などの出費がかさみ、家計を圧迫していました。ついに、私の昼ご飯はCostcoの栄養バーとプロテインになり、ラボの建物内で行われる実験機器メーカーの商品紹介にはドーナツ目当てに毎回出席することになりました。今、留学されている先生方から見れば、私は渡米当初は円高でよかったのかもしれませんが、帰国を前に懐事情が厳しくなりミシガンの冬の寒さが身に堪えました。 一方で、余暇は存分に楽しみました。日本ではなかなか家族と過ごす時間はありませんでしたので、貴重な思い出です。夏はダウンタウンを歩くだけでも気持ちが良いですし、ハロウィン、ファーマーズマーケットなどイベントが多くありました。冬は雪遊びのほかには、寒さで外で遊ぶことが難しく、友人宅で食事をしたり屋内で子供が遊べる施設に行ったりという過ごし方でした。日本では、家族ぐるみで食事をするということもあまりなかった私ですが、ようやく人とのつながりがとても大切だということに気が付き、研究者同士、駐在の方のご自宅に集まり親睦を深めました。さらに、地元の日本人会であるミシガン金曜会という組織に参加し、幹事を務めることになったため、留学仲間たちとバーべキューや研究会、懇親会を企画したりと忙しく過ごしました。中でもバーべキューは大変な人気で、50人以上の研究者や留学生が一同に、広い公園の敷地内にあるバーべキュー場を陣取って、子供たち同士が遊んでいるのを横目に見ながら、和気あいあいと過ごしました。 ミシガンというとデトロイト、自動車の町というイメージを持つ方も少なくないと思いますが、ミシガン州のナンバープレートにはwater wonderlandというだけあり、自然に溢れるきれいな州です。少し遠出をすれば、滝、五大湖、砂丘、風車の景色やマキナック島という馬車や自転車のみでめぐる美しい島にも行くことができます。中でもアッパーミシガンに行くと、鉄や銅やマグネシウムなどの金属によりきれいに彩られた岩壁、ピクチャードロックを船から見たり、紅葉を見たりトレイルを歩いて滝を見たり自然154

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