おわりに写真5 ナイアガラの滝での写真シンシナティ小児病院医療センター留学報告しかし、母体と臍帯血の両方の血漿中濃度を測定している既報を用いて妥当性を検証したところ、母体PBPKモデルは、特に低用量の場合、既報で測定された個々の母体濃度を過小評価する傾向にあり、それに伴い臍帯血濃度も実測値より低値を示す傾向にありました。そのため次に、母体における実測値により適合できるように各患者の舌下吸収率をpost hocに個別化することで、対応する胎児の臍帯血濃度の予測性能が改善しました(図2)。以上より、開発したFetomaternal PBPKモデルを用いて、妊婦の血漿中濃度を基に舌下吸収率をpost hocに最適化することで、個々の胎児における曝露量をより正確に推定可能であることが明らかとなりました(Pharmaceutics. 2024; 16(3): 375)。将来的にはこのモデルを用いて推定した曝露量とNOWSの重症度との関連性を評価することで、妊婦の血漿中濃度を指標にNOWSの重症度を予測することも可能になることが期待されます。 本留学を通じて、新しい臨床薬理学分野のスキル・知識を吸収できるだけでなく、文化や言語、気候も違う地域で2年間生活することができ、研究者としてだけでなく人としても大いに成長できたと実感しております。薬剤師という立場で、病院から給料を支給されながら2年間も留学させていただくケースは非常に稀であり、本留学を快諾していただいた大分大学医学部附属病院薬剤部の伊東弘樹教授に心より感謝申し上げます。また、海外留学助成金の応募にあたり推薦状をご用意いただいた大分大学名誉教授・社会医療法人敬和会敬和国際医院院長の大橋京一先生、留学期間中に公私に渡りご指導・ご助力いただきましたCCHMCの水野知行先生、そして本当に貴重で価値のある2年間をご助力いただきました臨床薬理研究振興財団の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。本留学で得た成果は、私が所属する大分大学医学部附属病院の研究部門に貢献するだけでなく、本邦における臨床薬理学の益々の発展に微力ながら貢献できるよう日々精進して参りたいと存じます。最後になりましたが、異国の地まではるばる来てくれて、苦楽を共に過ごし、2年間側で支えてくれた妻と娘に感謝申し上げます(写真5)。151
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