臨床薬理の進歩 No.46
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CCHMCのTranslational and Clinical Pharmacology部門について写真4 Vinks教授と一部のDivisionメンバー CCHMCは全米の小児病院の中でもトップ3に入る規模の病院であり、2023年にはUS News & World ReportのBest Children's Hospitalに選ばれる等、世界的にも有名な小児病院です(写真3)。また、研究部門にも力を入れており、2023年には3億ドルを超える外部資金と約5000件の論文を投稿しており、米国における小児領域のイノベーションを担っている重要な機関の1つです。 Clinical Pharmacology部門はProf Alexander A. VinksをDivision directorとして、臨床医や基礎研究者と様々な臨床研究やトランスレーショナルリサーチを展開していました(写真4)。2022年12月の退官後は、Prof Tracy A. GlauserがDivision directorとなり、講座名もTranslational and Clinical Pharmacologyに変更されました。メンバーは非常に多国籍な方で構成されており、私の在籍期間でもアメリカ、オランダ、日本、中国、サウジアラビア、ブラジル、マレーシア、インド出身の方が在籍していました。私は日本人の水野知行先生のグループに加わり、一部のプロジェクトについてはPhDの学生の指導も担当させていただきました。 本講座の主な研究内容は、小児患者を中心に種々の薬物の個別化投与戦略を確立し、それらを臨床実装することで患者アウトカムが改善されるかを評価することです。市販されているほとんどの医薬品には、平均的な患者に対する投与法が示されていますが、患者の生理機能や、薬物反応、疾患特性等により、最適な投与量は患者ごとに異なります。本講座では、臨床薬理学やファーマコメトリクス(PMx)、薬理遺伝学、システム薬理学等を活用することで、集団レベルと個人レベルの両方において、薬物の挙動、治療効果、疾患プロファイル等を予測することにより、種々の薬物における投与戦略の最適化を試みていました。また、製薬会社を対象に、Model-Informed Drug Developmentに関するコンサルティングも展開しており、定量的モデリングとシミュレーション技術を駆使し、小児臨床試験デザインや投与量の最適化、データ解析、モデル構築等も担うことで、より安全かつ迅速で費用対効果の高い医薬品開発の促進にも貢献していました。148

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