臨床薬理の進歩 No.46
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方  法<統合失調症群>選択基準: 1) 昭和大学附属烏山病院精神科に入院中の統合失調症患者で、精神障害の診断と統計マニュアル 第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)診断基準を満たす患者 2) 同意取得時の年齢が20歳以上60歳未満である患者 3) 口頭、文書による十分な説明のうえ、主治医が同意能力ありと判断した場合は本人から、そうでない場合は代諾者から同意を得られた者を対象とする。除外基準: 1) 本研究の評価ならびに安全性に影響があると考えられる既往歴(脳器質性精神障害、薬物乱用・依存、アルコール乱用・依存、悪性腫瘍、炎症性腸疾患、心疾患、肝疾患、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患)を有する者 2)口腔内乾燥の症状がある者 3) 現在喫煙中の者、または禁煙継続期間が1年未満の者 4) アレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎)の自覚症状があり、その治療薬を服用中の者 5) 研究担当医師の判断により不適格と判断された者<健康成人群>選択基準: 1) 同意取得時の年齢が20歳以上60歳未満である者 2) 本研究への参加について本人から文書により同意が得られた者除外基準: 1) 本研究の評価ならびに安全性に影響があると考えられる既往歴(薬物乱用・依存、アルコール乱用・依存、悪性腫瘍、炎症性腸疾患、心疾患、肝疾患、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患)を有する者138(Second-Generation Antipsychotics:SGA)が高血糖、脂質異常症、体重増加などの代謝異常のリスクを高めることが報告されている3,4)。これらの有害反応は、SGA使用後数年間発症が遅れ、その後早期の死亡につながる可能性がある5)。 脂肪組織は、活動的かつ重要な内分泌器官であることが知られており6)、なかでも、アディポネクチンは、抗糖尿病、抗アテローム性動脈硬化、抗炎症特性などの役割を担っている 7)。アディポネクチンは,脂肪細胞から特異的に分泌されるにもかかわらず、内臓脂肪蓄積・肥満により、その血液中濃度が低下し、逆に減量により増加する8)。  統合失調症におけるアディポネクチン濃度には様々な情報9-13)があり、一致した見解は得られていない。統合失調症患者における唾液中アディポネクチン測定の意義は、その非侵襲性と患者負担の軽減にある。唾液中アディポネクチン濃度が血中濃度と相関することが確認されれば、統合失調症患者の代謝異常リスクを簡便に評価するバイオマーカーとして臨床応用できる可能性がある。特に、SGAによる代謝異常の早期発見や治療効果のモニタリングに役立つと考えられる。また、唾液中アディポネクチン濃度の変動パターン分析により、個別化医療の推進や統合失調症と代謝異常の関連メカニズム解明に貢献できる可能性がある。そこで、統合失調症患者における唾液および血液中アディポネクチン濃度を測定し、両者の相関性を明らかにすることを目的とした。 本研究実施により、唾液と血液中アディポネクチン濃度の相関性が確認されれば、アディポネクチン濃度測定が必要な際に、唾液を検体とすることで非侵襲的かつ無痛的に採取でき、患者への負担軽減と臨床応用の促進につながると考えられる。研究対象者の選択 以下の選択基準をすべて満たし、除外基準のいずれにも抵触しない者を研究対象とした。

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