臨床薬理の進歩 No.46
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率現発のNPOの上以2ドーレグ)%(Ip0 40001000オキサリプラチン累積投与量(mg)100図3 大腸がん患者におけるスタチン系薬剤服用によるOIPN発現までのオキサリプラチン累積投与量への影響スタチン系薬剤服用群およびスタチン系薬剤非服用群の患者におけるグレード2以上のOIPN発現までのオキサリプラチン累積投与量をKaplan-Meier法により表記し、log-rank検定を行った。80604020スタチン系薬剤非服用群(n=251)スタチン系薬剤服用群(n=252)=0.06020003000リアルワールドデータを用いたオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対する予防薬の検討 薬剤性の有害反応は、同じ薬剤においてもヒトによって異なる有害反応を引き起こすことから、特定の有害反応の予防を標的とした薬剤の開発は、疾患を対象とした創薬に比べて、研究開発が進んでいないのが現状である。一方、ドラッグリポジショニングは、既存の医薬品の適応症以外の新たな作用を特定する創薬開発である。この開発戦略は、安全性プロファイルや薬物間相互作用のリスクがすでに特定されており、探索段階の試験を減らすことができ、医薬品開発にかかる時間とコストを大幅に削減することができる。このようなメリットを考慮すると、特に有効な既存の治療薬がない有害反応において、ドラッグリポジショニングによる薬剤開発が大いに期待できる。CIPNは推奨される予防法や治療法のない重篤な有害反応であり、ドラッグリポジショニングによる創薬戦略を含む多角的な介入が緊急に必要と考えられる。スタチン系薬剤は、ラットのOIPNモデルにおいてオキサリプラチンによる神経軸索の変性を抑制することを座間味らは報告しており5)、スタチン系薬剤が薬物のドラッグリポジショニングに基づくOIPN管理のための新たな薬剤となる可能性を示唆した。最近、岡本らは、OIPNの発現率に対するスタチン系薬剤 の効果をレトロスペクティブな研究で検討したが7)、OIPNの発現率および重症度に対する有意な効果を認めなかった。しかし、これは少数の患者を対象とした単一施設での研究であり、スタチンの効果を明らかにするためには、より多くの患者を対象としたさらなる研究が必要と考えられる。 オキサリプラチンは、大腸がん、胃がん、膵がんなど様々ながんの治療に用いられており、急性および慢性のCIPNの発現率が高い1,2)。そこで我々は、オキサリプラチンを含む化学療法施行患者、特にCRC患者における末梢神経障害に対するスタチンの効果を調査するために、多施設共同の観察研究を実施した。全2657例およびCRC患者1866例におけるグレード2以上のOIPNの発現率は、それぞれ24.7%および24.5%であり、過去の報告と一致した9,10)。CIPNに関連する指標(グレード3の発現率、重症度、オキサリプラチン中止の割合)にはいずれも有意差はなかった。糖尿病、肥満および高齢は、CIPNのリスク因子として報告されている11,12)。これらの因子を含む、末梢神経障害と密接に関連すると考えられる複数の因子が、スタチン服用群とスタチン非服用群で異なっていたため、傾向スコアマッチングを用いて解析を行った。133

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