*1Fukudo Masahide 札幌医科大学附属病院 薬剤部はじめに要 旨antibody:ADA)の測定は、中和抗体によるLoss of 目的 抗体薬の治療継続性の影響因子を同定するとともに、ウステキヌマブおよびオゾラリズマブの薬物動態(pharmacokinetics:PK)-抗薬物抗体(anti-drug antibody:ADA)と臨床アウトカムとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 本研究に登録された患者集団(422名)およびウステキヌマブ(36名)、オゾラリズマブ(8名)療法施行患者を解析対象とした。治療継続性の評価では、治療失敗を観察イベントとした。統計解析では、ロジスティック回帰分析およびROC曲線解析を実施した。結果 女性の性別と治療期間中の抗菌薬併用が、治療失敗のリスク因子であることが判明した。抗ウステキヌマブ抗体の陽性率は低かったものの(4/36 [11%])、ADA産生は薬物血中濃度の低下に影響を及ぼすこと、有効性のトラフ濃度閾値は約2 µg/mLであることが示唆された(AUCROC=0.9384)。一方、抗オゾラリズマブ抗体の産生は認められず、薬物血中濃度は16週までに有効性のカットオフ値1 µg/mLを超えていた。結論 抗体薬のPKとADAの評価並びに性別と抗菌薬併用に関する情報は、治療最適化に資する。 近年、がんや自己免疫疾患等の治療薬として、標的分子に対する高い特異性と親和性を有する抗体薬が次々に開発され、治療成績の向上に期待が集まっている1)。しかし、抗体薬の効果には個人差が認められること、また重篤な副作用も報告されていることから、安全かつ最適な投与法の確立が課題とされている2)。 抗体薬は、タンパク質から成るバイオ医薬品であり、免疫原性の評価、特に抗薬物抗体(anti-drug Response (LOR) や抗体薬とADAから成る免疫複合体によるGain of Toxicityの観点から、薬物動態(pharmacokinetics:PK)評価と並んで有効性と安全性を理解する上で重要と考えられる。オゾラリズマブは、抗TNF-αナノボディ2個と抗ヒト血清アルブミンナノボディ1個を有する3量体構造の新規ヒト化低分子抗体である。関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者を対象とした本剤の臨床試験において、16週の血漿中トラフ濃度が1 µg/mL以上の患者では、有効性の指標に対する高い効果が報告されている3)。一方、本剤に対する中和抗体が陽性となった一部の患者では、本剤のPKおよび有効性への影響が示唆されている3)。したがって、ADAに対する治療薬物モニタリング(TDM)は、抗体薬を用いた治療の個別最適化に資することが期待されるが、日本人における抗体薬Key words:抗体薬、薬物動態、免疫原性、リアルワールド、個別化医療抗体医薬品のPK-ADA解析を基盤とした治療最適化に資するリアルワールドエビデンスの創出Building real-world evidence to optimize treatment with therapeutic monoclonal antibodies based on pharmacokinetic and immunogenicity assessment福土 将秀*11
元のページ ../index.html#15