臨床薬理の進歩 No.46
147/216

結  果統計解析 2群間の差は、連続変数およびカテゴリー変数は、Mann-Whitney U検定、Fisherの正確検定またはχ2検定を用いて解析した。末梢神経障害の発現率については、Kaplan-Meier法を用いてlog-rank検定を行った。慢性末梢神経障害の発現率の解析には、傾向スコアマッチングを用いた。傾向スコアは、年齢、Body Mass Index(BMI)、 推算糸球体濾過量(eGFR)、糖尿病、およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびカルシウム拮抗薬との併用薬の常用を共変量として用いて算出した。マッチングはキャリパー係数を0.2としたロジスティック回帰分析を用いて行われた。p<0.05の場合を統計学的に有意と判断した。患者背景 オキサリプラチンによる化学療法を受けた患者を含むレジメンの開始前および開始中にスタチンを服用されていた。スタチン服用の有無による患者背景を表1に示す。スタチン服用群は、非服用群より高齢、BMI高値、eGFRは低値であり、糖尿病の有病率が高く、ARB、ACEI、カルシウム拮抗薬の使用率が有意に高かった。OIPNの発生率 オキサリプラチンを投与された2657例において、グレード2以上のOIPNの発現率は24.7%であった。また、スタチン服用群では23.0%、スタチン非服用群では25.0%であった。両群における、オキサリプラチンの累積投与量や神経障害による治療中止率に有意な差はなかった。次に、末梢神経障害の発現に影響を及ぼす可能性のある患者背景の違いを補正するために、傾向スコアマッチングを行い解析した。傾向スコアマッチングの結果、両群間で年齢、合併症および併用薬剤に有意な差リアルワールドデータを用いたオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対する予防薬の検討はなかった(表1)。OIPNの発現率は、マッチングされた両群間で有意な差はなかった(スタチン服用群22.0%、スタチン非服用群24.9%)(図1)。神経障害の重症度と末梢神経障害によるオキサリプラチンの中止率は、両群で同程度であった。オキサリプラチンの累積投与量とグレード2以上のOIPNの発現率との関係をlog-rank検定を用いて検討したところ、スタチン服用群とスタチン非服用群のOIPNの累積発現率に有意差は認められなかった(図2)。大腸がん患者におけるOIPNに対するスタチンの有効性の検討 大腸がん(CRC)患者におけるスタチンの効果について解析した。表2は、CRC患者における患者背景を示す。CRC患者では、スタチン服用群は非服用群に比べて有意に高齢、BMI高値、eGFRは低値、糖尿病の有病率が高く、ARB、ACEI、カルシウム拮抗薬の使用率が高かった。CRC患者においてもスタチン服用群とスタチン非服用群の両群間におけるグレード2以上のOIPN発現率に差はなかった(スタチン服用群21.5%、スタチン非服用群25.1%)(図1)。さらに、傾向スコアマッチングを用いてCRC患者におけるスタチン服用とOIPNとの関連を解析した。傾向スコアマッチングの結果、両群間で年齢、合併症および併用薬剤に有意差はなかった(表2)。両群を比較すると、グレード2以上のOIPNの発現率はスタチン服用患者で有意に低かった(スタチン服用群19.8% vs スタチン非服用群28.3%、p<0.03)(図1)。神経障害のためにオキサリプラチンを中止した患者の割合も、スタチン非服用群(14.8%)に比べてスタチン服用群(11.5%)で低かったが、その差は有意ではなかった。CRC患者における末梢神経障害の累積発現率をlog-rank検定を用いて検討した。Kaplan-Meier曲線は、スタチン服用群が末梢神経障害の発現リスクを低下させる傾向を示した(図3)。2657例のうち、368例(14%)がオキサリプラチン129

元のページ  ../index.html#147

このブックを見る