*1Takechi kenshi *2Zamami YoshiTo 岡山大学病院 薬剤部*3ishiZawa keisuke 徳島大学大学院 医歯薬学研究部 臨床薬理学分野、徳島大学病院 薬剤部、徳島大学病院 総合臨床研究センターはじめに要 旨目的 オキサリプラチンは、様々な化学療法に用いられているが有害反応として末梢神経障害が高頻度でみられ、予防法の確立が喫緊の課題である。一方、ビッグデータ解析と基礎研究により、スタチン系薬剤がオキサリプラチン誘発末梢神経障害(OIPN)に有効である可能性が見出され、ドラッグリポジショニングの観点からも臨床応用が期待されている。本研究では、スタチン系薬剤のOIPNに対する効果をリアルワールドデータで明らかにすることを目的とした。方法 オキサリプラチンの投与を受けた患者に関する後方視的カルテ調査を多施設共同研究で検討した。結果 グレード2以上のOIPNの発現率は、解析対象全体では、スタチン服用群と非服用群での差は認められなかった。しかし、大腸がん患者では、スタチン服用群は非服用群に比して有意にOIPNの発現率低下が認められた。結論 本研究の結果から、スタチン系薬剤がOIPNの予防薬として有効であることが示唆され、OIPNに対する新たな予防法の確立が期待される。 オキサリプラチンは、大腸がんや膵がんなどで各種がん治療に使用されており、化学療法における重要なキードラッグの1つである。一方、オキサリプラチンの有害反応として、末梢神経障害の発現頻度が高いことが報告されており、投与直後から数日以内に見られる急性末梢神経障害および治療が継続することによって生じる慢性末梢神経障害が問題となっている1,2)。実際、オキサリプラチン誘発末梢神経障害(OIPN)によるしびれや痛覚過敏は、難治性であることから、患者の身体的苦痛を増悪させ抗がん剤の減量・中止に繋がるだけでなく、治療期間の延長による経済的損失も少なくない。したがって、オキサリプラチンによる、有害反応の発現に対する予防戦略の確立は喫緊の課題と考えられる。各種抗がん剤の投与により発現する末梢神経障害の予防対策として、牛車腎気丸やビタミン製剤、カルシウムやマグネシウム製剤の使用が検討されているが、それらの効果はいずれも不十分であり、未だ有効な予防法は確立されていない1-3)。また、米国臨床腫瘍学会(ASCO)および日本ペインクリニック学会のガイドラインにおいて推奨される神経障害性疼痛治療に用いる薬剤は、デュロキセチンおよびプレガバリンであるが、抗がん剤誘発末梢神経障害に対して著効を示す薬剤は存在していないのが現状である1,2)。一方、OIPNは知覚神経細胞体への直接的な障害やオキサリプKey words:多施設共同研究、スタチン系薬剤、ドラッグリポジショニング、オキサリプラチン、末梢神経障害松山大学 薬学部 医療薬学科 医薬情報解析学リアルワールドデータを用いたオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対する予防薬の検討Prophylactic drugs for oxaliplatin-induced peripheral neuropathy using real world data武智 研志*1 座間味 義人*2 石澤 啓介*3127
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