結 果統計解析 統計解析ソフトにはEZRを用い、p<0.05を有意差ありと判断した。患者背景は中央値(四分位範囲)あるいは人数(%)で示し、抗体価の結果は中央値(四分位範囲)で示した。2群間の比較はMann-Whitney U検定を用いた。SARS-CoV-2 IgG抗体価に関連する因子を検討するため、スピアマンの順位相関係数および重回帰分析を用いて解析を行った。研究倫理 本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従い、実施医療機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(徳島大学病院医学系研究倫理審査委員会承認番号3991)。研究フローと患者背景 図1に本研究のフローを示す。371名がエントリーし、358名を解析対象とした。ワクチン接種後4か月目までのフォロー中にCOVID-19に罹患した者はいなかった。患者背景を表1に示す。全員が日本人で、年齢の中央値は70歳、男性が67%、透析年数は7.5年、透析原因は糖尿病性腎不全が35%、慢性糸球体腎炎が31%であった。合併症は、糖尿病が49%、全ての心血管疾患が63%、悪性腫瘍が21%で、現在悪性腫瘍の治療中が2%であった。治療を要する自己免疫性疾患の合併が7%、腎移植後が0.6%であった。ワクチン接種前後の使用薬剤として、ワクチン免疫に影響を及ぼす可能性のある薬剤として、ステロイドの使用が7%、免疫抑制薬が2%、NSAIDsが16%、抗腫瘍薬が2%、抗アレルギー薬が22%であった。ワクチン接種後のSARS-CoV-2 IgG抗体価 図2にワクチン接種後のSARS-CoV-2 IgG抗体価の推移を示す。健康成人で報告されているとおり、2回目のワクチン接種後7〜14日目に抗体価は透析患者における新型コロナワクチン抗体価に影響する因子の検討ピークとなったが、ばらつきが大きかった。7日〜1か月のSARS-CoV-2 IgG抗体価の中央値は4091.7 AU/mL(Arbitrary Units per mL:抗体の濃度を示す任意の単位)、1〜2か月では2199.2 AU/mL、3〜4か月では789.1 AU/mLと経時的に低下した。65歳以上と65歳未満で抗体価を比較したところ、有意な差を認めなかった(データは示していない)。同じワクチンとSARS-CoV-2 IgG測定試薬を用いた海外の非透析健康成人対象研究6-8)と比較すると、我々が検討した透析患者の抗体価は低かった。ワクチンの副反応の程度は、報告されている副作用と大きな相違はなかった。SARS-CoV-2 IgG抗体価に影響を与える因子の検討 次にSARS-CoV-2 IgG抗体価に影響を与える因子について検討した。SARS-CoV-2 IgG 値との各パラメータの単相関では、自己免疫疾患の合併、ステロイドあるいは免疫抑制薬の使用、現在治療中の悪性腫瘍の合併が、抗体価と負の相関を示した。一方で、血清アルブミン値とHb値が、抗体価と正の相関を示した(アルブミン:2か月抗体価 1か月抗体価 rs=0.19、p=0.03)。SARS-CoV-2 IgG値と各パラメータとの重回帰分析の結果を表2に示す。ステロイドあるいは免疫抑制薬の使用、悪性腫瘍治療中が抗体価を負に制御する因子で、血清アルブミン値が抗体価を正に制御する因子であった。 ワクチン投与前の抗PEG IgMと抗PEG IgGは、マウス抗PEG IgM抗体(100 ng/mL)、IgG抗体(100 ng/mL)相当の発色が得られるものを1 U/mLと定義すると、抗PEG IgMと抗PEG IgGの中央値はそれぞれ1.57 U/mLと123.83 U/mLで、患者間のばらつきが大きかった(データは示していない)。ワクチン投与前の抗PEG IgMと抗PEG IgGの値を加えてSARS-CoV-2 IgG値に影響を与える因子に関して重回帰分析を行ったが、抗PEG IgMと抗PEG IgGの値はいずれも寄与因子ではなかった(データは示していない)。rs=0.19、p<0.01、4か月抗体価rs=0.19、p<0.01; Hb:123
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