臨床薬理の進歩 No.46
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*1Yoshida sumiko はじめに要   旨目的 日本人維持透析患者における新型コロナワクチン接種後のSARS-Cov-2 IgG抗体価に影響する因子を明らかにする。方法 BNT162b2ワクチンを2回接種した維持血液透析患者358名を対象に、ワクチン接種後1か月以内、1〜2か月後、3〜4か月後にSARS-CoV-2 IgG抗体価を測定し、抗体価に影響を与える因子について、接種前の抗PEG IgMおよび抗PEG IgGを含めて検討した。結果 年齢の中央値は70歳、男性が67%、透析年数は7.5年であった。重回帰分析の結果、ステロイドや免疫抑制薬の使用、治療中の悪性腫瘍の存在がワクチン接種によって得られるSARS-CoV-2 IgG抗体価を低下させる因子であり、血清アルブミン値が抗体価を高める因子であった。結論 透析患者では、ステロイドあるいは免疫抑制薬の使用、悪性腫瘍治療中はCOVID-19ワクチン接種後のSARS-CoV-2 IgG抗体価が低下する。(COVID-19)の重症化の危険性が最も高い集団で 透析患者は中高年・高齢者がほとんどを占め、複数の疾患を合併し、新型コロナウイルス感染症ある。海外の報告では、透析患者の短期死亡率は20%を超え1)、我が国の新型コロナウイルス感染対策合同委員会による透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数を見ると、2022年1月時点では致死率15.8%であった。COVID-19の収束にむけて驚異的なスピードで新型コロナワクチンが開発され、全世界で接種が行われた。新型コロナワクチンではmRNAワクチンという新しい免疫獲得機序のワクチンが導入され、透析患者は免疫不全の状態にあることから、透析患者におけるワクチンに対する免疫反応は未知の部分が多かった。感染症対策やワクチン接種はその国の社会基盤に強く影響を受けることから、超高齢社会で維持透析患者が多い我が国における、多数例の患者を用いたリアルワールドデータが求められていた。そこで、日本人透析患者の新型コロナワクチン接種後の抗体価に影響を与える要因を明らかにすることを目的に臨床研究を実施した。 一方、新型コロナワクチンには、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれていることも特徴であり、PEGが含まれているワクチン製剤が広く使用されるのは初めてであった。PEG修飾を用いた医薬品では、PEG に特異的な抗体(抗PEG抗体)が誘導されることが報告されており、抗PEG抗体が誘導されると、繰り返し投与時の PEG修飾体Key words:COVID-19、新型コロナワクチン、mRNAワクチン、抗ポリエチレングリコール(PEG)抗体、透析患者独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター  臨床研究部(元:徳島大学大学院 医歯薬学研究部 血液・内分泌代謝内科学) 透析患者における新型コロナワクチン抗体価に影響する因子の検討Investigation of factors affecting antibody titers for the COVID-19 vaccine in dialysis patients吉田 守美子*1121

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