臨床薬理の進歩 No.46
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推定した。各アリルにはCPICガイドラインに所属しているPGx研究の有識者が定義した予測酵素活性値であるアクティビティスコアが定義されているため、この値を基に各ディプロタイプのアクティビティスコアを算出した。CYP2B6、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A5、DPYD、NUDT15、TPMT、UGT1A1はアクティビティスコアを基にUltrarapid metabolizer (UM)、Rapid metabolizer (RM)、Normal metabolizer (NM)、Intermediate metabolizer (IM)、Poor metabolizer (PM)に分類した。ABCG2およびSLCO1B1はIncreased function (Increased)、Normal function (Normal)、Decreased function (Decreased)、Poor function (Poor) に分類した。VKORC1の各ディプロタイプはワルファリン感受性型 (Sensitive)、中間型 (Intermediate)、抵抗性型 (Resistant) と分類した。NAT2遺伝子のアリルはCPIC ガイドラインで定義されていないためNAT2命名サイト(https://nat.mbg.duth.gr/Human_NAT2_alleles.htm (accessed 2024-10-28))を使用した。NAT2の標準アリルは*4であるためNormal function/Unknown/Indeterminateに該当するアリルはすべて*4アリルとした。過去の報告8)を基にNAT2ディプロタイプ情報から薬物代謝酵素の酵素活性 (Rapid acetylator:RA、Intermediate acetylator:IA、Slow acetylator:SA) を推定した。 2024年10月現在CPICには27種類のガイドラインが策定されている。これらの中から、薬剤の曝露量に関係する遺伝子を対象とし、フェノタイプごとに推奨されている介入方法が明記されている20種類の薬剤 (アタザナビル、β遮断薬、シタロプラム/エスシタロプラム、クロピドグレル、エファビレンツ、フルオロピリミジン、フルボキサミン、NSAIDs、オンダンセトロン/トロピセトロン、オピオイド、パロキセチン、プロトンポンプ阻害薬、セルトラリン、タクロリムス、タモキシフェン、チオプリン製剤、三環系抗うつ薬、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボルチオキセチン) を対象とした。推奨されている介入方法は標準治療 (Normal dose)、投与量を増加する (Increased 110ためにVariant quality score recalibration(VQSR)を行った。 本研究ではCPICガイドラインでアリル情報が定義されているABCG2、CYP2B6、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A5、DPYD、NAT2、NUDT15、SLCO1B1、TPMT、UGT1A1、VKORC1からのバリアント情報を使用した。CYP2D6のコピー数測定 CYP2D6の欠失や複製を含むコピー数変異 (CNV) はTaqMan Copy Number Assay プローブ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、Hs00010001_cn(exon 9)およびHs0483572_cn(intron 2))を用いて行われた。コントロールにはRNase Pを用いた。7900HT Fast Real-Time PCR System (サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いてリアルタイムPCRを行った。得られたデータとCopy Caller software (サーモフィッシャーサイエンティフィック) を用いてコピー数を算出した。PGx関連遺伝子のアリル、ディプロタイプ決定およびフェノタイプ推定 CPIC ガイドライン の中で定義されているアリル、ディプロタイプ決定およびフェノタイプ推定のtableを用いてPGx関連13遺伝子 (ABCG2、CYP2B6、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A5、DPYD、NAT2、NUDT15、SLCO1B1、TPMT、UGT1A1、VKORC1) のアリル、ディプロタイプ決定およびフェノタイプ推定を行った。まず、ターゲットシークエンシングで得られたバリアントおよびコピー数アッセイで得られたCNV情報をallele definition tableと照らし合わせアリルを決定した。Allele functionality tableにおいて、Normal function/Unknown/Indeterminateに該当するアリルはすべて*1アリルとした。また、ディプロタイプ決定時にハプロタイプ情報が矛盾したアリルはUnknownとした。Diplotype-phenotype tableを用いてディプロタイプ情報から薬物代謝酵素の活性を

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