方 法 ゲノムDNAはギリシャ (n=304)、ヨーロッパ (n=100)、アラブ首長国連邦 (n=100)、ナイジェリア (n=120)、中国 (n=120)、日本 (n=1,087)、インドネシア (n=562)、ラオス (n=100)、ミャンマー (n=100)、マレーシア (n=105)、フィリピン (n=100)、タイ (n=100)、ベトナム (n=100) から収集された計2,998人を用いた。ヨーロッパ、ナイジェリア、中国、日本のゲノムはコリエル医学研究所から購入し、上記以外の集団はSEAPharm (Southeast Asian Pharmacogenomics Research Network)4) プロジェクトから提供された。本研究は国立研究開発法人理化学研究所の人を対象とする研究に関する倫理審査委員会の承認を得て行われた。ターゲットシークエンシング PKseqパネルはPK関連100遺伝子の重要なプロモーターとスプライシングサイトを含む全エクソンのゲノム領域を増幅するプライマーセットである。これらのプライマーセットを用いて1st PCRを行った。1st PCR産物の個体識別のためにバーコードとミックスし2nd PCRを行った。2nd PCR産物をAMPure XP(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて精製した。精製産物の断片長を確認するために2100バイオアナライザ (アジレントテクノロジー)で電気泳動を行った。精製産物のReal Time PCRを行い、ライブラリー濃度を測定した。精製産物を10 pMに段階希釈後、MiSeqシステム(イルミナ)とMiSeq Reagent Nano Kit v2(500サイクル、イルミナ)を用いてシークエンシングを行った。 fastqファイル取得後、Trimmomatic 5)によってアダプターをトリミングし、クオリティの低い塩基を除去した。Burrows-Wheeler Aligner (0.7.17)6)を用いてリードをヒト参照ゲノム (GRCh37/hg19) にマッピングした。Genome Analysis Toolkit (GATK version 3.5)7)を用いてsingle nucleotide variants (SNVs) や short insertions and deletions (indels)をコールした。擬陽性のバリアントを除く13集団のPGx関連遺伝子バリアントの大規模アノテーションデータベースの構築報告によってバリエーション頻度が大きく異なり、集団間の差異であるのか、プラットフォームの精度の問題であるのか判断することができないことも問題である。 PGxバイオマーカーは臨床現場でも有用であるため、NUDT15と難治性炎症性腸疾患および急性リンパ性白血病治療薬チオプリン製剤、UGT1A1と抗がん剤イリノテカン、CYP2C9と多発性硬化症治療薬シポニモドが本邦でも保険収載されている。遺伝子検査によってNUDT15がCys/Cys型と決定された患者はチオプリン製剤の減量または代替薬の使用が行われている。また世界的なPGxバイオマーカーのガイドラインとしてはCPIC (Clinical Pharmacogenetic Implementation Consortium; PGx検査の結果に基づいて、有害事象の発現が高リスクの患者もしくは薬剤の反応性が低いと予想される患者には標準的な薬物治療とは異なる用法・用量が推奨されている。しかし、これらのガイドラインが様々な集団に適用することの是非は報告されていない。 本研究では、多様な集団のPGx関連遺伝子のバリアントのデータベースを構築するために、ギリシャ、ヨーロッパ、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、中国、日本、インドネシア、ラオス、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムから収集された2,998人のゲノムを用いてPGx関連遺伝子のアリルとフェノタイプを推定した。また薬剤の体内曝露量に関係する13遺伝子および20種類の薬剤を対象としたCPICガイドラインにおいて、異なる治療介入方法の対象となる患者の頻度の違いを各集団間で比較することによってPGxバイオマーカーのバリアントの機能的なアノテーションを付随したデータベースを構築した。対象患者https://cpicpgx.org/(accessed 2024-10-28)) ガイドラインが策定されている1)。このガイドラインでも109
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