臨床薬理の進歩 No.46
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AB考  察図1 抗PD-L1抗体による免疫療法後に完治しなかったマウスを用いた経時的なT細胞レパトア解析文献 2)より引用、改変。を評価することは重要であるが、今回の研究では、そこまでの評価はできなかった。しかし、皮膚組織には典型的なTrmマーカー(CD69陽性、CD103陽性)を発現するT細胞のサブセットが存在することは確認することができた。今後将来的にはそれらのレパトア解析や腫瘍への反応性などの機能的な側面も評価することが重要であると考えている。また、本研究では、ネオアジュバント療法のような形でICI治療後に採取した腫瘍に後に再移植した腫瘍組織で確認されたTCRレパトアを持つT細胞が存在していた。このことは、現在臨床試験が行われている、術前のICI治療症例において、摘出された腫瘍組織(瘢痕化しているかもしれないが)に含まれるTILを解析することは、TCRを人工的にT細胞に導入する細胞療法を発展していく上で重要な情報となるかもしれない。また、今回の研究で十分に検討できなかったが、メモリー機能を持つT細胞がどのようにして形成されていくのか、個体によってメモリーを獲得できた個体とできなかった個体が認められたが、何が決定的な違いだったのか、といったことを今後明らかにする104いることで、一旦ICI治療に奏効した患者検体の解析から見出した治療抵抗性関連候補因子の解析にも有用であり、現在複数の候補因子の解析を行っている。 この研究では、再移植したMC38細胞をCD8 T細胞依存的に完全に拒絶できる免疫学的記憶モデルマウスを確立することができた。この研究の中で、LNからのT細胞の輸送を阻害するFTY720を用いても、再移植したMC38細胞の拒絶が見られたことから、皮膚に分布したメモリーT細胞(Trm)が強力な抗腫瘍効果を発揮したためと考えている。ICI療法で長い奏効を得たメラノーマ患者の解析からは、腫瘍病巣と健常皮膚は同一のレパートリーを持つT細胞を共有しており、これらのT細胞が長期間維持され、Trmマーカーを発現していることが近年報告された3)。腫瘍再移植前に、共通のクローン型を持つT細胞が組織常在型のTrm細胞として皮膚に実在するかどうか

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