結 果とが示された。どの免疫細胞がMC38への記憶に必須であるかを特定するために、抗CD4抗体または抗CD8抗体をメモリーマウスに投与することでCD8陽性またはCD4陽性T細胞を枯渇させた上で、MC38の再移植を行った。その結果、CD8陽性T細胞の枯渇が、メモリーマウスのMC38拒絶能力を消失させたことから、CD8陽性T細胞が腫瘍拒絶に必要であり、CD8陽性T細胞依存的な免疫記憶が形成されていることが示唆された。CD8陽性 T細胞は標的細胞のMHCクラスI分子上に提示された抗原を認識することから、MHCクラスI分子の細胞表面への提示に必須のB2Mタンパク質をノックアウトしたMC38細胞を用意し、メモリーマウスに移植した。その結果、B2MノックアウトMC38はメモリーマウスに生着したことから、我々の作製した免疫記憶モデルでは、CD8 T細胞がMHCクラスI分子上に提示された特異的抗原を認識し、MC38への拒絶能を獲得していることが示された。 次に、メモリーマウスの腫瘍拒絶を担うCD8T細胞が、腫瘍再移植前から腫瘍を移植する場所(皮下組織)に存在していたのか、それとも腫瘍移植後にリンパ節(LN)からリクルートされたのかを調べるため、LNからのT細胞の遊走を阻害するS1P受容体モジュレーターFTY720を処理した。マウスにFTY720を投与すると、末梢血中の循環T細胞が有意に減少し、リンパ節のリンパ球が末梢組織へ移動することが制限された。まず、メモリーマウスに腫瘍再移植後1日目にFTY720投与したが、メモリーマウスのMC38拒絶能は保持されていた。即ち、腫瘍を特異的に認識できるT細胞は組織常在T細胞として局所に存在していた可能性が示されており、最近報告されているTissue Resident T cellと一致している。そこで、次に腫瘍、他の組織、所属リンパ節(dLN)のTCRレパトア配列の決定を試みた。102して−20 ℃で保存した。投与前にFTY720を生理食塩水で希釈し、実験終了まで週3回腹腔内投与した。腫瘍体積は以下の式で算出した。 (短径)2×(長径)/2 mm3。統計解析 統計解析はすべてPrism software 9.2.0(GraphPad)を用いて行った。In vitro実験のグラフには、平均値の標準偏差(SD)および誤差(SEM)を示した。in vitro実験における2群の比較には、両側対応のないt検定を用いた。In vivo実験ではMann-Whitney U検定を用いた。p値は各図に記載した。ICI治療で完治が得られたマウスでは、腫瘍細胞を再移植してもICI治療なしで自然に拒絶される C57BL6マウス由来の大腸がん細胞株MC38細胞を移植したC57BL6マウスにICIによる治療(抗PD-L1抗体治療)を行うと、約3割程度のマウスで完治(CR)が達成され、その後1年間にわたって腫瘍の再発は観察されなかった。CRマウスがMC38に対する免疫学的記憶を獲得しているかどうかを評価するために、最初の注射部位とは反対側の背側皮下にMC38細胞を皮下接種してCRマウスに腫瘍を再移植したところ、すべてのCRマウスはMC38細胞を完全に拒絶し、腫瘍形成は認められなかった。再移植したマウスが長期間にわたってMC38を繰り返し拒絶できることを確認するため、6ヵ月後に再びMC38を移植したが、すべてのCRマウスでMC38は拒絶され生着は認められなった。即ち、これらのマウスはMC38に対する持続的な免疫学的記憶を獲得していることが示された(メモリーマウス)。メモリーマウスの腫瘍への拒絶反応がMC38特異的かどうかを調べるため、同じくC57BL6マウス由来の肺がん細胞株LLC細胞をメモリーマウスに移植したところ、LLC細胞は拒絶されなかったことから、メモリーマウスの免疫記憶はMC38細胞に特異的であるこ
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