臨床薬理の進歩 No.46
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対象と方法オートファジーを標的とした炎症性腸疾患に対する新規治療法の開発となるということが少なからず生じている6)。薬物療法の発展により同一患者の頻回手術は減少傾向にあるが、2024年現在 IBD に対する根治可能な治療法は存在していない。また薬物療法の長期投与を要する症例が増え、医療経済的にも大きな課題となっている。 本研究では、既存の治療薬と作用機序が異なっているオートファジー誘導を標的としたIBDに対する新規治療薬を開発することを目的とした。マウス C57BL/6J系統のマウスは、クレア・ジャパン株式会社(東京)から入手した。実験には7週齢の雌マウスを使用した。マウスに関する実験は、大阪大学医学部実験動物施設の動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号: #27-099-000)。すべての実験手法は、大阪大学医学部実験動物施設の動物実験委員会のガイドラインおよび規制に従って実施した。high-throughput assay systemを用いたオートファジー誘導物質の同定 1 × 103 GFP-LC3発現マウス胚線維芽細胞を96ウェルプレートの各ウェルで16時間培養し、その後、天然化合物ライブラリに含まれる各物質で処理した。5時間後、Incell Analyzer 1000(GE Healthcare UK Ltd.、England)を用いてGFP-LC3点状構造の面積を測定した。ヒト腸管組織サンプル コントロールの腸管は、大腸癌(CRC)非癌部の肉眼的および顕微鏡的に健常な領域から採取された。また、臨床所見および内視鏡所見に基づいて診断されたUC患者から、外科的に切除された標本から炎症部および非炎症部腸管が採取され、炎症部の病理組織学的検査により中等度から重度の炎症が確認されたUCサンプルを、評価に供した。細胞単離は既報告プロトコルに沿って施行した7)。本研究は大阪大学医学部倫理委員会の承認を受けて実施された(承認番号: #10261)。すべての患者から標本使用に関するインフォームド・コンセントを得た。フローサイトメトリー フローサイトメトリー解析は、FACS CantoⅡフローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて実施した。LPCはFACS AriaⅡシステム(BD Biosciences)を使用して精製し、データはFlowJoソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR)で解析した。ウェスタンブロッティング 細胞溶解物および組織サンプルは、プロテアーゼ阻害剤(Thermo)およびホスファターゼ阻害剤(Thermo)を含むRIPAバッファー(Thermo)に溶解した。免疫ブロットは、抗マウスLC3B抗体(希釈1:1000)、抗マウスβアクチン抗体(希釈1:1000、Sigma-Aldrich Co. Llc、SLE、USA)、および抗マウスGAPDH抗体(希釈1:2000、Abcam)を使用して行った。定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)解析 Total RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen K.K.、California、USA)を使用して腸管粘膜固有層細胞から抽出した。RNAは、High-Capacity RNA-to-cDNA Kit(Thermo)を用いて、製造業者プロトコルに従い、一次鎖相補DNAに逆転写した。qRT-PCRは、Thunderbird Probe qPCR Mix(東洋紡株式会社、大阪、日本)を使用してABI Prism 7900HTシーケンス検出システム(Applied Biosystems (Thermo)で実行した。増幅条件は、95 ℃で10分間、次いで95 ℃で15秒、60 ℃で60秒のサイクルを40回繰り返した。すべての値はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードするGapdhの発現に対して正規化し、91

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