臨床薬理の進歩 No.46
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謝  辞利益相反代謝物量およびそれらに対する抗微生物薬の効果にどのような影響を与えるかについては、さらなる検討が必要である。最後に、本研究では腸内細菌叢の構成は調査されておらず、測定された代謝物の種類も限られていたため、腸内細菌が担う代謝に対して抗微生物薬が及ぼす影響を包括的に評価することができなかった。 以上より、本研究は、嫌気性細菌を標的とした抗微生物薬の非経口投与が便中のSCFA量を大幅に減少させることを明らかにした。今後の研究では、抗微生物薬が腸内細菌叢に作用するメカニズムや宿主に及ぼす長期的な影響を明らかにすることが期待される。 本研究を遂行するにあたり、研究助成を賜りました臨床薬理研究振興財団に深く感謝申し上げます。 本研究に関して開示すべき利益相反はない。88酸量の差を検出する検出力は 0.8 以上と推定された。一方、これら以外の抗菌薬が便中代謝物量に及ぼす影響については、本研究からは結論を導くことが困難である。例えば、本研究では症例数が限られていたセファゾリンやセフメタゾールの影響を検証するには、今後さらなる研究が必要である。 次に、本研究は観察研究であるため、得られた結果はさまざまな交絡の影響を受けている可能性がある。例えば、アンピシリンやピペラシリン・タゾバクタムなどの抗微生物薬を投与された患者は、市中肺炎を契機として入院していること、絶食が行われている割合が高かったことから、抗微生物薬投与後にみられた腸内代謝物量の変化は、抗微生物薬の直接的な影響だけでなく、疾患や絶食と関連している可能性が示唆される。しかし、プロペンシティスコアを用いて調整した後でも、結果は一貫していることが確認された。さらに、マウスを用いた検証により、アンピシリンとタゾバクタム・ピペラシリンが腸内のSCFA量を直接的に減少させることが確認された。次に、臨床研究において研究対象者は高齢であったため、本研究の結果をより若年の集団に外挿する際には注意が必要である。患者の年齢や併存疾患、または、併用薬が腸内

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