考 察◆ 絶食のみ ◆ アンピシリン ◆ ピペラシリン・タゾバクタム図3 マウス盲腸における短鎖脂肪酸量アンピシリンまたはピペラシリン・タゾバクタムの投与前(Baseline)、投与開始から4、7および10日目における盲腸中酢酸 (A)、プロピオン酸(B)、酪酸(C)の含有量、および、(D)マウス便の水分含有割合を示した(各ポイントは5匹のマウスから得られた平均値±標準偏差を示す)。多重比較により、各時点における測定値を投与前における値と比較した。*および**は投与前と比較して有意な差があることを示す(それぞれp < 0.05およびp < 0.01)。タゾバクタムを投与した場合、便中の酢酸、プロピオン酸、および、酪酸量はさらに低下し、その効果の持続時間は、絶食処置のみの場合と比較して、遷延することが確認された(図3A-C)。また、アンピシリンまたはピペラシリン・タゾバクタムの投与によって、マウス便の水分含量割合が増加することが確認された(図3D)。 SCFAは主に下部消化管、特に、大腸内の嫌気性細菌によって生成され、宿主の生理機能にも影響を86から2回目の便採取までに数日経過している場合があった。したがって、上記の臨床研究で得られた結果は、様々な交絡の影響、特に、絶食や入院の契機となった疾患の影響を受けている可能性があった。そこで、マウスを用いて、アンピシリンまたはピペラシリン・タゾバクタムの非経口投与が、腸内の酢酸、プロピオン酸、および、酪酸量に直接影響を及ぼすかどうかを検証した(図3)。マウスにアンピシリンまたはピペラシリン・タゾバクタムを腹腔内投与し、絶食処置を行った結果、絶食のみでも便中のプロピオン酸および酪酸量は有意に減少した。しかし、アンピシリンまたはピペラシリン・
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