変形性膝関節症において滑膜病変に伴い関節液中にウロキナーゼが増加する機序の解明図 2 軟骨組織への荷重負荷実験に用いた力学試験機を示す。採取した軟骨組織を組織の湿重量1 gあたり2.5 mLの培養液とともにプラスチックバッグに入れて力学試験機のプラットフォーム(矢印)上に置き、1 MPaの荷重を60回繰り返し加え、遊離した因子を培養液とともに回収した。 採取した軟骨組織は採取直後に 4 ℃に冷却したPBS 中で十分に洗浄したのち表面積と湿重量を計測し、プラスチックバッグに密閉して解析まで- 80 ℃で保存した。荷重によって軟骨組織から遊離したタンパクの調整 Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)にITS(1%、シグマアルドリッチ、アメリカ合衆国セントルイス市)、L-glutamine(0.1%、シグマアルドリッチ)および抗生剤(1000 U/mL Penicillinおよび 0.1 mg/mL Streptomycin)を添加したものを本研究用の培養液(以下、単に培養液)として用意した。軟骨組織を湿重量 1 g あたり 2.5 mL の培養液とともにプラスチックバッグに入れて密封し、この状態の軟骨組織に力学試験機(Model SV- 201NA、今田製作所、名古屋市)を用いて平地歩行の際に膝関節の軟骨に加わる荷重に近い 1 MPa(10.2 kg/cm2)の荷重を 60 回繰り返し加え、荷重によって軟骨組織から遊離する因子を培養液中に回収した(図 2)。 繰り返し荷重ののちプラスチックバッグ内の培養液を回収し、遠心分離によって上清を得た。この上清をさらに孔径 0.22 µm のフィルター(Millipore Express、Millipore、アメリカ合衆国バーリントン市)を通して 4 ℃で保存した。培養液は調整後1 週間以内に実験に用いた。軟骨より荷重によって遊離したタンパク量の計測 上記 2 で用意された培養液を用い、軟骨組織からどの程度の量のタンパクが遊離したかを調べた。こ の 計 測 は Pierce BCA Protein Assay Kit(ThermoFischer Scientific、アメリカ合衆国ウォルサム市)を用い、添付のプロトコールに従って計測を行った。遊離タンパクを含まない培養液とのタンパク濃度の差から荷重によって軟骨組織から遊離したタンパクの量を求めた。一次培養ヒト滑膜細胞を用いた実験 この実験は上記 1 で採取された滑膜組織を用い例 12 例から人工関節置換術の際に行った。採取のSystems、アメリカ合衆国ミネアポリス市)およびLuminex 100/200 analyzer(Luminex、アメリカ合衆国オースティン市)を用い、R&D Systems が定めたプロトコールに従って行われた。軟骨組織、滑膜組織の採取 膝 OA 例からの軟骨組織の採取は内側型の膝 OA際は脛骨近位関節面において肉眼的な軟骨変性部と非変性部を区別し、それぞれの領域から関節軟骨組織を採取した(図 1)3)。採取は軟骨下骨の直上から、軟骨を全層にわたって採取した。さらにこのうち 3 関節からは軟骨に加えて滑膜組織も採取し、後述する一次培養滑膜細胞の実験に用いた。また本研究では剖検例 9 例の 9 膝関節から対照軟骨を採取した。対照軟骨の採取は関節疾患や外傷の既往がない膝関節において、肉眼的にも病的変化がないことを確認したうえで OA 軟骨と同様に脛骨近位関節面の荷重部から行った。8585
元のページ ../index.html#99