方 法タイプ)と治療の有効性、抵抗性を調べた報告はない。そこで今回、PM/DM の初発患者や再燃・再発(治療抵抗例)患者の免疫細胞プロファイルをフローサイトメトリーで解析・追跡し、治療経過と照らし併せ、治療抵抗性患者の特徴的な免疫フェノタイプを見出して免疫フェノタイプに応じた治療戦略構築を目指した。患者検体 本研究課題では、2021 年 12 月から 2023 年 10 月の期間に東京医科歯科大学病院膠原病・リウマチ内科に入院した PM/DM 患者が対象となった。PM/DM の診断は、Bohan and Peter の診断基準、または厚生労働省作成皮膚筋炎/多発性筋炎診断基準を下に行った。PM/DM 患者の初発時や再燃・再発時の末梢血は、当科に入院した際、初期治療開始や治療再強化前に、診療に併せて採取した。以後、病態が安定している患者では、初期治療後、または治療再強化後 6 ヶ月、8 〜 9 ヶ月、12 ヶ月のタイミングで(一部患者ではそれ以降の時期に)、定期外来の採血に併せて解析用の末梢血を採取した。なお、フローサイトメトリー解析者の都合上、上記全期間において全対象患者の末梢血は採取していない。寛解、再燃・再発の定義 本研究課題における寛解と再燃の定義は以下とした。寛解:初発症例に対する初期治療(寛解導入療法)後、または再燃・再発症例に対する治療再強化後、6 ヶ月以上経過し、筋炎症状の増悪(筋力低下・筋痛の進行、クレアチニンキナーゼ(CK)値高値持続など)・皮膚症状の増悪・間質性肺炎の増悪(画像所見上、KL-6 値の高値持続など)・疾患特異的随伴症状の増悪(関節炎など)を認めず、PSL 15 mg/日以下に漸減できていること。再燃・再発:初期治療後、または治療再強化後、PSL 漸減過程で(再燃)、または、一定期間 0 〜少量 PSL と免疫抑制58に対する PSL 加療でステロイド筋症が生じた場合、患者が治療効果を実感できず、満足度にも影響する。また、PSL 漸減過程で、筋炎や IP が再燃・再発した場合は、PSL を中等〜高用量へ再増量し、併用免疫抑制剤を変更する。しかし、複数の免疫抑制剤を試しても、治療抵抗性を示す筋炎または IP の症例が一定数いる。以上より、PM/DM に対する新規治療薬の開発が喫緊の課題である。また、筋炎の再燃・再発の度に筋傷害が進行するだけでなく、PSL 再増量に伴うステロイド筋症の副作用も再度加わるため、PM/DM 治療では、1 〜 2 回の寛解導入療法で病勢の寛解と維持の達成が理想的である。 病態特異的な治療の観点では、カルシニューリン阻害薬であるタクロリムス(Tac)の PM/DM-IPに対する有効性を検証する医師主導治験の結果 7)、本邦において Tac は PM/DM-IP に対し追加適応症の承認を得た。しかし、カルシニューリン阻害薬は、低用量では効果不十分な時、高用量では腎毒性を呈する時がある。マウスレベルでは、PMと同様に筋傷害の主病態を自己反応性細胞傷害性CD8+ T 細胞が担う C 蛋白誘導性筋炎(CIM)モデルマウス 8)に対し、CD80/86 阻害剤の関節リウマチ治 療 薬 CTLA4-Ig( ア バ タ セ プ ト ; ABA) が、CD4+ T 細胞だけでなく CD8+ T 細胞の活性化も直接抑制して治療効果を有することが示されたが 9)、ABA は第Ⅲ相臨床試験において炎症性筋疾患に対し主要評価項目で有効性を示せなかった。同じく、CIMマウスに対し有効であった乾癬治療薬の抗IL-12/23 抗体のウステキヌマブも 10)、炎症性筋疾患に対する第Ⅲ相臨床試験において有効性を示せず、PM/DM に対する新規治療薬の開発はアンメットニーズである。 近年、PM/DM 患者の末梢血単核球細胞(peripheral blood mononuclear cells; PBMC)をフローサイトメトリーで解析し、臨床所見との関与、診断マーカーとしての有用性、IP 合併や疾患活動性と相関することを謳う報告を多く認める 11〜13)。一方、PM/DM 患者の免疫細胞プロファイル(免疫細胞フェノ
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