臨床薬理の進歩 No.45
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21220050度濃度濃度濃************************コリンベタインジメチルグリシン患者数 [名]2218対照2502001501005090603025201510他の胆汁うっ滞PFⅠC1他の胆汁うっ滞他の胆汁うっ滞表2 他の胆汁うっ滞患児47名の内訳文献 5) より引用、改変。図 1 PFIC1 患児ではコリン及びその代謝物群の血漿中濃度が低下しているPFIC1患児(22名)、他の胆汁うっ滞患児(47名)、肝疾患既往歴のない対照患児(30名)の血漿中に含まれるコリン、ベタイン、ジメチルグリシン濃度をLC-MS/MSの一斉分析系を用いて測定した。Violinプロットは、中央の線が中央値、端は上下の四分位数を示す。p値は、Welchの一元配置分散分析と、多重比較のためのpost hoc DunnettのT3検定によって算出された。0.05未満の場合に図中に示した。****; p<0.0001。文献 5)より引用、改変。疾患名進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型進行性家族性肝内胆汁うっ滞症3型進行性家族性肝内胆汁うっ滞症4型進行性家族性肝内胆汁うっ滞症5型良性反復性肝内胆汁うっ滞症2型原因不明対照PFⅠC1対照PFⅠC1コリン補充食は PFIC1 モデルマウスの肝病態発症を予防する PFIC1 モデルマウスでは、遊離コリンの小腸吸収機能が維持されていることが確認された。従って、コリン補充療法により PFIC1 モデルマウスの肝病態発症を予防できる可能性が考えられる 5)。母乳組成は食餌中のコリン含量を反映するため、出産後の母マウスに 1% 塩化コリンを補充したコリン補充食(CSD; choline supplementation diet)を与える試験を実施した。PFIC1 モデルマウス及びそのコントロール同腹仔を離乳直後(4 週齢)に解剖し、生体試料のサンプリングを行った。CSD 給餌群において、PFIC1 モデルマウスの成長遅延、小腸の形態異常(絨毛の短縮)は改善しなかった(図 2A、B)。一方、本マウスの肝障害マーカー(AST、ALT)は有意に改善し、正常化した(図 2C)。また肝組織病理解析の結果、PFIC1 モデルマウスで観察される脂肪滴の蓄積、脂肪滴マーカー(Plin2)、好中球マーカー(MPO)、マクロファージマーカー(F4/80)による染色面積が、CSD 給餌群では著明に減少し、コントロールマウスと同程度の水準となった(図 2D)。すなわち、CSD 給餌により、PFIC1 モデルマウスの肝病態発症が抑制できることが明らかとなった。38施設(学会登録機関)を対象とした本疾患の実態調査を 2015 年に実施している。本調査研究にて同定した、22 名の PFIC1 患者、47 名の他の胆汁うっ滞性疾患患者を同年齢の肝疾患既応歴のない対照患児(30 名)とともに本研究に登録した。被験者の基礎データは、表 1に示した。他の胆汁うっ滞患者群は、PFIC1 と類似した臨床所見を呈する、血中γ-GT 値が正常な胆汁うっ滞患者で構成されている(表 2)2,4)。LC-MS/MS を用いてコリン及びその代謝物群の一斉分析系を構築し、これら患者の血漿成分を解析した。その結果、PFIC1 患者では、コリン、ベタイン、ジメチルグリシンの血漿中濃度が、他の胆汁うっ滞性疾患患者や年齢をマッチさせた対照患児と比べて有意に低いことが確認された(図 1)。

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