臨床薬理の進歩 No.45
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* 1 SHIBATA KAITO * 2 MOCHIZUKI TAKASHI * 3 OGAWA NORIYOSHI * 4 KAWAKAMI JUNICHI * 5 NAITO TAKAFUMI 柴田 海斗*1  望月 啓志*2 小川 法良*3 川上 純一*4 内藤 隆文*5関節リウマチ患者におけるトシリズマブの血中動態と血清 FcRn結合タンパク質及び可溶性 IL-6 受容体との関係解析Relationships between serum tocilizumab and serum FcRn-binding proteins or soluble IL-6 receptor in rheumatoid arthritis patientsはじめに要   旨目的 関節リウマチにおいて、ヒト化抗インターロイキン-6(IL-6)受容体抗体薬であるトシリズマブの血中濃度低下は治療失敗に関連する可能性がある。本研究では、トシリズマブの皮下投与を受けた臨床的寛解にある関節リウマチ患者 33 名を対象に、血清中トシリズマブ濃度と血清中タンパク質及び可溶性 IL-6 受容体濃度との関連性を明らかにした。方法 評価項目は、血清中トシリズマブ濃度、胎児性 Fc 受容体に結合するタンパク質として血清中アルブミン値及び総免疫グロブリン G(IgG)値、血清中可溶性 IL-6 受容体濃度とした。結果 血清中トシリズマブ濃度は大きな個人差を示した。血清中トシリズマブ濃度はアルブミン値と正の相関を示した。一方で、血清中トシリズマブ濃度は総 IgG 値及び可溶性 IL-6 受容体濃度と関連しなかった。結論 血清中アルブミン値が低値を示す患者では、血清中トシリズマブ濃度の低下が確認された。長期寛解維持による機能予後・生命予後の改善に寄与すると考えられる。 関節リウマチに用いられる一部の抗体薬において、薬物血中濃度が治療効果に大きく影響することが報告されており、インフリキシマブではその血中濃度検査が保険収載されている 1)。トシリズマブにおいては、これまでに、関節リウマチの臨床的寛解に必要な血中トシリズマブ濃度が報告されており、そのカットオフ値を下回る患者は全体の約 30% 存在していた 2)。関節リウマチの寛解維持においても、皮下投与されたトシリズマブの血中濃度低下は治療失敗に関連する可能性があるものの、その個人差要因は明らかではない。Key words:トシリズマブ、関節リウマチ、血清中濃度、アルブミン、IL-6 受容体信州大学医学部附属病院薬剤部(元:浜松医科大学医学部附属病院薬剤部)浜松医科大学医学部附属病院薬剤部浜松医科大学医学部内科学第三講座浜松医科大学医学部附属病院薬剤部信州大学医学部附属病院薬剤部28 ヒト化抗インターロイキン-6(IL-6)受容体モノクローナル抗体薬のトシリズマブは、既存の治療で効果不十分な関節リウマチに対して使用されており、疾患活動性や患者のライフスタイルに応じて点滴静注もしくは皮下注での投与を選択できる。関節リウマチの寛解維持療法では、利便性やコストの点でトシリズマブの皮下投与が実施されるが、予期せぬ症状の悪化や再燃を認める場合がある。トシリズマブの皮下投与を受ける患者において、関節リウマチの治療失敗に関連する要因を解明し、それを回避するための予測法を構築することは、

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