考 察までの期間に急性拒絶反応が発現した。この期間は、mPSL の投与時刻を夜から朝に変更した期間と一致する。これは、mPSL 夜投与によって抑制されていた免疫反応が、mPSL の投与が朝に変更されたことにより活性化したために急性拒絶反応が発現したものと考えられる。mPSL 夜投与の長期間継続により、副腎機能抑制以外の有害反応が懸念されるが、手術後 28 日目まで夜投与を継続すると急性拒絶反応の発現がさらに抑制できるもの思われる。 ABO 血液型不適合やリンパ球クロスマッチ陽性のためにリツキシマブを手術前投与した症例では、mPSL 夜投与による急性拒絶反応の抑制効果が発揮されなかった。リツキシマブは抗 CD-20 モノクローナル抗体であり、臓器移植では抗体関連拒絶反応の抑制のために使用される。炎症性疾患や自己免疫性疾患を対象にした基礎研究および臨床研究により、リツキシマブの作用は B 細胞だけにとどまらず、CD4(+)T 細胞のコンパートメントに影響を及ぼすことが指摘されている 9,10)。臓器移植後の急性拒絶反応発現に、リツキシマブの B 細胞非依存的な作用がどのように影響しているか詳細は不明であるが、リツキシマブ投与例で mPSL 夜投与の有効性が認められなかった要因である可能性がある。 副腎皮質ホルモン剤は多様な有害作用を持ち、生体リズムの観点では視床下部-下垂体-副腎系への影響がある。これまでの基礎研究において、休息期の副腎皮質ホルモン剤の投与は体内時計を乱すことが報告されている 11)。臨床研究においては、mPSL を 660 µg/h で持続投与した時の副腎機能は深夜~ 4 時投与で最も強力に、さらに 16 時~ 20時投与で中程度に抑制されている 12)。一方、8 時~16 時投与では副腎機能抑制はほとんど認められていない。本研究における mPSL の夜投与は 20 時頃に行われており、手術後 14 日目では夜投与群のほとんどで ACTH およびコルチゾールの分泌低下を認めた。この副腎機能抑制は、mPSL の投与時刻を朝に切り替えることで回復する傾向にあった。その他にも副腎皮質ホルモン剤には感染症の誘発、18を夜投与から朝投与に変更した後の手術後 28 日目頃に再度検査すると、夜投与群のほとんどの症例でこれらの値は基準値以上まで改善していた。 AST/ALT、総ビリルビンおよびγ-GTP 濃度の推移には、朝投与群と夜投与群の間に有意差は認めなかった(図 7)。併用薬使用の有無および感染症の有無 手術終了後から退院時までの間において、血液培養陽性および腹腔内感染を認めた症例数、CMV 陽性細胞を認めた症例数を表 4に示した。いずれの出現率も、朝投与群と夜投与群で同程度であった。また、周術期以降にインスリンスライディングスケールを実施した症例および経口降圧薬を服用した症例の割合も、朝投与群と夜投与群で同程度であった(表 5)。 急性拒絶反応は移植手術後 2 ~ 3 日後から発現することがあるが、手術後 7 日目から 14 日目の間に発現する場合が多い。本研究において、急性拒絶が発現しやすい移植後周術期における mPSL 時間治療の有用性が明らかとなった。特に、リツキシマブの前投与がない mPSL 夜投与群では、手術後 14 日目までに急性拒絶反応が 1 例も発現しなかった。 急性拒絶反応には特異的な臨床所見や検査所見はなく、腹水貯留や門脈血流低下、肝胆道系酵素の上昇から急性拒絶反応を疑っている。さらに、急性拒絶反応発現における免疫反応の指標として、好酸球数増加の有用性を示す報告がある 6~8)。本研究において、夜投与群は手術後周術期における好酸球数の推移が有意に低値であったことから、mPSL 夜投与は朝投与よりも免疫抑制作用が大であると考えられる。この投与時刻によって免疫抑制作用の程度が異なるために、急性拒絶反応の発現率が mPSL 夜投与により有意に抑制したと考えられる。 mPSL 夜投与群では、手術後 14 日目から 28 日目
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