臨床薬理の進歩 No.45
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藤村 昭夫 1991 年にバブルが崩壊し、わが国の経済は長期停滞に陥ることになりました。国の生産性の高さの目安となる一人当たりの名目 GDP の推移をランキングで見ると、わが国は 2001 年に世界5 位でしたが、その後、順位を下げ 2018 年には 20 位となりました。これは、わが国は先進国の中で最も高齢化率の高い国であり、少子高齢化によって労働力人口が減少しているために経済が成長しないことによるとされています。 このような経済力の低下にともなって研究力も低下しているようです。例えば、各研究分野においてトップ 1%に入ると評価された論文数を国別に見ると、わが国の順位は、1998 - 2000 年は 4 位、2008 - 2010 年は 5 位でしたが、2018 - 2020 年は 12 位に急落しています。これは大変忌々しきことであり、早急に研究体制を整えるとともに、国内外から優秀な人材を集めてこの状況を打破する必要があることは言うまでもありません。さらに、研究に対する意識改革も必要だと思われます。わが国では、実利を追う余りに博士課程に進学する学部学生が減り、さらに、医科大学の臨床系の助教の 30%は臨床業務に追われて研究を全く行っていない(あるいは研究を行わなくても良い)とされています。本財団が交付する研究奨励金は、臨床薬理研究を積極的に奨励推進し、世界に通じる研究成果を公表することを目的としたものであり、本奨励金が契機となって研究に情熱を燃やす研究者が増えることが期待されます。 「臨床薬理の進歩 No.45」には 2020 年度および 2021 年度に採択された研究課題に関する論文がそれぞれ 1 編および 18 編、および海外留学助成金報告書 1 編が掲載されています。いずれの研究課題も最先端のテーマを取り扱っていますが道半ばのものが多く、今後さらに研究を継続し、新しい治療法を確立することが望まれます。また今回も研究大賞論文が 5 編選ばれました。「臨床薬理の進歩 No.46」に執筆予定の方々は研究大賞を受賞した論文に目を通して、これらに勝るとも劣らない報告書を作成して頂きたいと思います。2024 年 4 月170あ と が き

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