(p < 0.01)と有意に増加した(図 1C)。痩せに関する一方で、アナモレリン開始時の body mass index(BMI)は Responder で有意に低かった(Responder:18.4 kg/m2、Non-responder:22.4 kg/m2、p = 0.01)(表 2)。治療効果の予測指標として、ROC 解析を用いてBMI を評価すると、Area under curve(AUC)0.890、感度 85.7%、特異度 88.9%、cut-off 値は 19.9 kg/m2であった(図 2C)。QOL-ACD アンケートにおける食欲関連項目(Q8、Q9)の合計スコア、および痩せに関する Q11 は、ともに Responder でのみ有意に改善した(図 2D、2E)。治療効果の個人差と悪液質関連因子 アナモレリン治療効果の個人差の要因を解明するため、内服開始前後の悪液質関連因子の測定を実施した。アナモレリンは脳下垂体の growth hormone (GH) secretagogue receptor type 1a (GHS-R1a)に結合し GH の分泌を促進する。さらに GH は肝臓にて IGF-1 の分泌を誘導し、IGF-1 が骨格筋に作用することで筋蛋白合成を促す。アナモレリンの薬理作 用 の 中 心 で あ る IGF-1 を Responder、Non-responder において比較したところ、治療開始前は差 が な く(IGF-1 中 央 値、Responder:46.1 ng/mL、Non-responder:47.8 ng/mL)、アナモレリン内服後 1 ヶ月、3 ヶ月における血中 IGF-1 増加量も両群で差がなかった(図 3A)。また食欲関連ホルモンである ghrelin、leptin も有意な差はなく、またアナモレリン内服後 1 ヶ月においても大きな変動はなかった(図 3B、3C)。がん悪液質の促進因子である炎症性サイトカインである interleukin(IL)-1β、IL-6、tumor necrosis factor-α(TNF-α)も両群で差はなく、さらにアナモレリン内服後も変動はなかった(図 3D、3E、3F)。有害反応の検討:高血糖 アナモレリンの重要な有害反応の 1 つとして高血糖が存在する。非小細胞肺癌患者を対象とした試験結果から、添付文書における血糖上昇の発現率は 4.3 % と記載されているが、膵癌患者における発現率は明らかではなく、本研究で調査を実施した。4 名(25.0%)、GEM 単剤 2 名 (12.5%)であった。有効性の評価 主要評価項目である LBM、および副次評価項目である体重のアナモレリン治療開始後 3 ヶ月間の経時的推移を示す。治療開始後 1、2、3 ヶ月におけるLBM 変化の平均値は、それぞれ +0.9 kg、+1.1 kg、-0.2 kg であった(図 1A)。一方で、体重は漸減傾向であった(図 1B)。QOL-ACD アンケートにおける食欲関連項目(Q8、Q9)の合計スコアは、全員が維持(5 名)もしくは増進(11 名)となり、内服開始後 1 ヶ月で +2.4 点( p < 0.01)、2 ヶ月で +2.2 点Q11(スコアが高いほど痩せに関する自覚が低い)は、内服開始後 1 ヶ月で +1.2 点(p = 0.054)、2 ヶ月で +1.3 点(p < 0.05)となり有意に改善した(図 1D)。また、上記以外の質問項目を含む各質問区分を評価すると、アナモレリン内服後「活動性(Q1-6)」、「社会生活(Q17-21)」は改善が得られなかった一方で、「身体状況(Q7-11)」、「精神・心理状況(Q12-16)」は治療開始後 1、2 ヶ月で有意な上昇がみられた。総合計スコアは治療開始後 1、2 ヶ月でそれぞれ +8.8 点(p < 0.01)、+11.1 点(p < 0.001)と有意な改善を示したが、3 ヶ月後では +1.8 点まで低下した(図 1E-1I)。治療効果の個人差 治療効果の個人差を評価するため、アナモレリン内服後 3 ヶ月において、LBM の維持・増加を継続した患者を治療応答群(Responder)、一度でも低下した患者を治療不応答群(Non-responder)と定義した。Responder は 9 名、Non-responder は 7 名となり、治療奏効率は 56.3% であった。Responder 群の LBM は治療開始後 1 ヶ月で +2.7 kg、2 ヶ月で+3.9 kg の増加を示し、Responder と Non-Responderの差は治療開始 1 ヶ月で 4.1 kg となり有意な差が生じた(図 2A)。体重の変化も LBM と同様の経過であった(図 2B)。患者背景の比較を表 2に示す。年齢、性別、performance status(PS)、治療開始前の体重減少率、Alb、CRP、Hb は両群間で差がなかった4
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